No.6 ページ6
.
心細くて、訳が分からなくて、ぐしゃぐしゃの顔をした私とは違い、
彼は何ひとつ表情を変えることなくまた口を開いた。
「だから、その猫が俺なんだって」
『っ、!』
まだ冗談を続ける気なのかと、頭がカッと熱くなる。
「ほんとだから……信じて」
だけど、真剣な面持ちで念を押す彼に、私の方が間違ってるんじゃないかと錯覚しそうになる。
……確かにこの人がイツキなら、こうして入れるはずのない私の部屋の中にいるのも、猫のイツキがいないのも辻褄が合う。
だけど、猫が人間になるって、そんなおとぎ話みたいな話があるわけ、、、
.
ただでさえ仕事終わりで疲れていた私には、多すぎる情報量。
この時、自分の脳はとっくにキャパオーバーしてたんだと思う。
突然ぐにゃりと部屋が歪んで見えて、あ、倒れる、と思った時にはもう遅かった。
ぼやけた視界の中、床へ吸い込まれるように身体が傾いた時
「A、!?」
私の名前を呼ぶ声がして、
大きな手が、私へ伸びてきた気がしたけど。
倒れる衝撃を感じる前に、私は意識を手放した。
.
458人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「THERAMPAGE」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:熊猫 | 作成日時:2022年4月15日 18時