No.13 ページ13
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「……、」
声がして、瞼の奥から光が差し込んでくる。
ふにふに、ふにふに。
頬を優しく、だけどしつこくつつかれる。
毎朝恒例、イツキのご飯催促タイムだ。
どうせ私がすんなり起きられるわけがないのに、ご苦労なことで。
『イツキ、ちょっと……あと5分だけ待って……』
寝起きの酷い声で返事しても猛攻が止まることはない。
こっちは眠たくて眠たくて、5分どころかあと5時間ぐらい寝かせてほしいんだけど。
……仕方ない。頭ぐらい撫でてやるか。
朦朧とした意識の中で手を伸ばせば、指先に触れたのはフワッフワの柔らかな毛じゃなくて。
少し硬くて、何より長い毛が指の間をサラサラとこぼれていく。
ん？サラサラ？
「何寝ぼけてんの」
少し舌ったらずな声がはっきり聞こえて、一気に頭が覚醒する。
目を開けば、発光してる？天使か？ってぐらい整った顔が視界いっぱいに広がった。
『わ、？！』
目を思い切りかっ開く。
そ、そうだった。イツキ、人間になったんだ。
『び、びっくりしたあ……』
「そろそろ慣れてくんない？」
『無理そう』
はあ、と息を吐いたイツキは私を見下ろしたまま続ける。
「てか大丈夫？」
『何が？』
「もう7時だけど」
『…………はっ？！』
がばりと起き上がり時計を見ればイツキの言った通り7時を少し過ぎた頃。
あと15分で出ないと朝礼に間に合わない。
『もう少し早く起こしてくれてもいいじゃん！』
「……ずっと起こしてたけど」
イツキに文句を言ったところでどうしようもないのに。
むすり顔の彼の肩を押しやってベッドを抜け出した。
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作者名：熊猫 | 作成日時：2022年4月15日 18時
