150cmの誤差 (ページ2)

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「でね、あの上司、私が断れないの分かってて仕事増やしてくるの。ムカつかない？」

スーパーで割引されていたお惣菜に手をつけながらひとり愚痴る。

少し離れたところに丸まったまま、ちらりとこちらに視線を向けたイツキ。

しかしそれも一瞬のことで、すぐにふいっと逸らされた。

ちょっとぐらい聞いてくれてもよくない？

こっちに友だちいないし、イツキぐらいしか話せる人いないのに。……いや、猫か。

…………いつも猫相手に愚痴ってる人って痛いかな。

今はイツキさえいれば幸せだって思ってるけど、

時々、恋人や友人、誰かと一緒に過ごしている周りの人を見ると無性に羨ましくなる。

『はぁ〜〜〜』

床に転がるクッションにダイブして、イツキの頭を撫でようと腕を伸ばす。

ふわふわした金色の毛が指先に触れて気持ちいい。

目を細めて、ぐるぐると喉を鳴らす姿に自然と笑顔がこぼれた。

『……イツキが人間になれたらいいのに』

ぽつりとこぼれた叶わない願い。

いつもは猫のままでいいけど、時々人になってさ

一緒に出かけたり、ただ家でごろごろして、一緒にご飯食べながらたわいも無い話をしたりできたら……

ま、そんなのあるわけないんだけど。

『美猫だからきっと人間になってもイケメンだろうなあ』

私の言葉の意味を知ってか知らずか、

イツキの大きな目は私をじっと見つめていた。

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