150cmの誤差 (ページ1)

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No.1 ページ1

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疲れた身体を引きずって、階段を一段、また一段とのぼっていく。

ここに来たばかりの頃は余裕だと思っていたこの階段。

今や少し上るだけで息が上がるものだから歳を感じるようでイヤになる。

……いや、ただ仕事で疲れてるだけってことにしとこ。

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ドラマみたいな世界に憧れて卒業を機に地方から都会に出てきたものの、

結局平凡な私がもらえた役は、名前もつけてもらえないOLというエキストラ。

休日に疲れた私を愛してくれる彼氏もいなければ、全てを忘れて没頭できるような趣味もない。

だけど、そんな面白みのない私を癒してくれる存在がたった1人、いや、1匹だけいる。

ようやくたどり着いたマンションの3階。

バッグに仕舞っていた鍵を鍵穴に差し込み、見慣れたネイビー色のドアを引き開けた。

『ただいまぁ』

他の家の子みたいに玄関までお出迎えはしてくれないし、

『イツキ！』

名前を呼んだところでいつも知らん振りだけど、

こうして家で待ってくれている猫(イツキ)がいるだけで、私はなんとか頑張れてるんだ。

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