No.84 ページ34
．
ずっと会いたかった人が目の前にいる。
それだけで視界が滲む。
健太は一瞬だけ驚いたように口を開けたけど、すぐに閉じて私を静かに見据えた。
「なんでここにいんの」
ひりひりと肌を刺すような声。
冷たい表情。
それだけで舞い上がった心はすぐに底へと落ちていく。
言いたいこと、聞きたいことがあるのに。
上手く言い出せなくて唇をキュッと結んだ。
その時、私と健太の間に入る人。
「A、健さんとちゃんと話をしようって来たんですよ」
壱馬さんが語気を強めて代わりに言ってくれた。
その言葉を聞き、こちらの様子を伺う他のメンバーをぐるりと見渡してから健太は長いため息を漏らす。
「こんなに見られちゃ話もできないでしょ。……こっち」
健太は私の手首をとって部屋の奥へと進んでいく。
「見世物じゃねえから」
冷ややかな言い方とは裏腹に、その手は前と変わらず優しく握られていて。
思わず顔を上げて健太の背中を見つめた。
．
たどり着いたのは、他のテーブルから背を向けるように置かれた部屋の端の席。
みんなからは離れているから多分大きな声を出さない限り聞こえない。
健太は私の手を離すとソファにどかりと座った。
少し距離をとって隣に座る。
何も話さない健太の顔を恐る恐る覗き見た。
……少し、痩せた気がする。
目の下の隈も酷い。寝れてないの？
─最近全然眠れなくて
─ 人のあたたかみ？みたいなのがあればちょっとは寝れるかなって
最初にそう言っていたから、てっきりもう眠れるようになったと思ってたのに。
じゃあ、
『……なんで、』
健太がちらりと私の方を見たのが分かった。
重たい口を何とか開く。
『どうして、急に私を手放したの？』
ようやく出た声は情けないほど震えていた。
．
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熊猫(プロフ) - コトリさん» 返信が大変遅くなってしまい申し訳ありません🙇💦以前からコトリさんの作品を読ませていただいていたので、コメントいただけたことにビックリしながらもとても嬉しいです！読んでいただきありがとうございました🙏✨ (2022年9月6日 12時) (
レス) id: 909b68a48b (このIDを非表示/違反報告)
コトリ(プロフ) - はじめまして。完結からだいぶ経ちますが作品読ませていただきました！ほんっとうにおもしろかったです…。宛書きですか？というくらいリアルで、脳内でドラマ化…。健太さんのクールな部分と柔らかい部分も読みごたえ抜群でした。素敵な作品ありがとうございます。 (2022年5月6日 11時) (レス) id: 16f707b051 (このIDを非表示/違反報告)
熊猫(プロフ) - ひなさん» コメントありがとうございます😭🙏✨色々伏線を張ってはいたものの本心まではたどり着けていなかったので、この番外編でお話できて良かったです😂最後まで読んでいただきありがとうございました🙇♀️ (2021年12月10日 21時) (レス) id: 0ec074764d (このIDを非表示/違反報告)
熊猫(プロフ) - Kazumiさん» コメントありがとうございます🙏✨自分の書いたお話でそこまで楽しんでいただけたかと思うと飛び上がるほど嬉しいです😭本当にありがとうございました！ (2021年12月10日 21時) (レス) id: 0ec074764d (このIDを非表示/違反報告)
熊猫(プロフ) - 余白のむらさん» 本当ですね😢余白のむらさんのコメントを拝見して、壱馬さんに別の素敵な相手が見つかるスピンオフがあっても良いかも…！と思いました☺️最後まで読んでいただき本当にありがとうございました！ (2021年12月10日 21時) (レス) id: 0ec074764d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：熊猫 | 作成日時：2021年9月9日 17時
