No.83 ページ33
．
時間になって急いで外へ出れば車に寄りかかる壱馬さんの姿が見えて。
『遅れてすみませんっ、！』
「いや、別に来たばっかりやけど……なんか慌ててへん？」
『あっ、いや、ちょっと……』
1人でバタバタしてるのが恥ずかしくて少し俯いた。
「行こか」
『……はい』
「ふはっ。そんな不安そうな顔されたら連れて行けんやん」
覗き見ると眉を下げて笑ってたから慌てて顔を上げる。
「なあ、ほんまに今日行ける？」
『……行きます』
「ほんまに？」
『はい』
一度決めたんだ。ここで引き返したら後悔する気がする。
「そっか。じゃあ乗って」
壱馬さんは私の肩を優しく叩いてから先に車へ乗り込んだ。
．
うるさい心臓を抑えながら久しぶりの事務所に入る。
前に立つ壱馬さんの後ろから周りを見渡したけど健太の姿はまだなくて、とりあえず胸を撫で下ろす。
「えっ、Aちゃん！？」
すぐ気付いたのは北人さん。
私の名前を呼ぶと小走りでこちらに向かってくる。
北人さんの大きな声によってみんなの視線が私に向いた。
「久しぶりー！よかったあ、また来てくれて」
「Aちゃん！ずっと心配してたんだよ〜」
北人さんに遅れて陸さんもこっちへ近付いてきた。
『ご心配をおかけしました』
「いいのいいの。また会えて嬉しい」
ニコニコしながら優しい言葉をかけてくれる陸さん。
その隣で北人さんは不思議そうに壱馬さんと私を交互に見つめていた。
「なんで壱馬とAちゃん一緒なの？珍しくない？」
「昨日山彰さんに送ってって頼まれてん。
そん時に今日も送るって約束したんよ。な？」
『は、はい』
「ふーん……」
なぜか納得してない様子だったけどそれ以上は聞いてこなかった。
「それで？Aちゃんは今日バイト？」
『あ、えっと……』
健太と話をしに来たんです。
そう伝える前に背後のドアが開く音がして。
「……え、なんで」
ずっと聞きたくてたまらなかった声が鼓膜を揺らす。
ゆっくりと後ろを振り返れば、
重い前髪の隙間から覗く 黒々とした瞳と視線がぶつかった。
『……健太』
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1027人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「THERAMPAGE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
熊猫(プロフ) - コトリさん» 返信が大変遅くなってしまい申し訳ありません🙇💦以前からコトリさんの作品を読ませていただいていたので、コメントいただけたことにビックリしながらもとても嬉しいです！読んでいただきありがとうございました🙏✨ (2022年9月6日 12時) (
レス) id: 909b68a48b (このIDを非表示/違反報告)
コトリ(プロフ) - はじめまして。完結からだいぶ経ちますが作品読ませていただきました！ほんっとうにおもしろかったです…。宛書きですか？というくらいリアルで、脳内でドラマ化…。健太さんのクールな部分と柔らかい部分も読みごたえ抜群でした。素敵な作品ありがとうございます。 (2022年5月6日 11時) (レス) id: 16f707b051 (このIDを非表示/違反報告)
熊猫(プロフ) - ひなさん» コメントありがとうございます😭🙏✨色々伏線を張ってはいたものの本心まではたどり着けていなかったので、この番外編でお話できて良かったです😂最後まで読んでいただきありがとうございました🙇♀️ (2021年12月10日 21時) (レス) id: 0ec074764d (このIDを非表示/違反報告)
熊猫(プロフ) - Kazumiさん» コメントありがとうございます🙏✨自分の書いたお話でそこまで楽しんでいただけたかと思うと飛び上がるほど嬉しいです😭本当にありがとうございました！ (2021年12月10日 21時) (レス) id: 0ec074764d (このIDを非表示/違反報告)
熊猫(プロフ) - 余白のむらさん» 本当ですね😢余白のむらさんのコメントを拝見して、壱馬さんに別の素敵な相手が見つかるスピンオフがあっても良いかも…！と思いました☺️最後まで読んでいただき本当にありがとうございました！ (2021年12月10日 21時) (レス) id: 0ec074764d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：熊猫 | 作成日時：2021年9月9日 17時
