No.17 ページ17
．
『あとね、』
「うん」
『私、、借金してて』
「あー親父の代わりに、でしょ？」
弾かれたように顔を上げて健太を見る。
『なんで知ってるの、？』
「翔吾……あ、うちのメンバーね。
そいつが色々調べる上でAのこともちょっと分かったみたいで。返すためにあの店にいたって教えてくれた」
そっか……知ってたんだ。
なぜか、"この人には知らないままでいてほしかった"という気持ちが頭の中を占拠する。
……こんな汚い自分を、知られたくなかった。
『健太は、、どう思う？』
「……なにが？」
『こうやって身体売って、借金返してた私のこと。
……気持ち悪い、よね』
すごい面倒くさいことを聞いてるって分かってる。
だけど耐えきれなくて、自虐するような言葉を吐いた。
「なんで？」
「気持ち悪い」って言われると思ったのに、健太は私の言葉を肯定しなかった。
背もたれから身体を起こすと、言っていることがひとつも理解できないと言いたげな顔で私を見つめている。
「クソ親父から勝手に借金押し付けられたんでしょ？
それに、Aがやりたくてやってたわけじゃないじゃん。どこが気持ち悪いの？」
『っ、！』
「けんたはAのこと全部分かってあげられるわけない。……だけど、辛かったのだけは分かるよ」
慎重に選びながら言ってくれたその言葉に視界が滲んで、健太の顔が見えなくなる。
そうだ、私ずっと辛かったんだ。
辛くて、だけどそこから逃げ出す方法を知らなくて、悲鳴をあげてる心を無視してた。
ぽろっと涙がひとつこぼれ落ちれば、もう止めることなんてできなくて。
何度拭っても、どんどん どんどん溢れ出してくる。
「頑張ったね」
たった一言だけ言って 私の背中をゆっくりとさすってくれた。
私に触れる時の健太の手は、いつも優しくてあたたかい。
私はしばらく 声を押し殺して泣いた。
．
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熊猫(プロフ) - ひなさん» ひな様。とってもあたたかいコメント、心に染みました；；更新頑張ります！ (2021年9月8日 20時) (
レス) id: 8e1b928499 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 今一番好きなお話です！これからも陰ながら応援しております！ (2021年9月7日 21時) (レス) id: aed219e8c6 (このIDを非表示/違反報告)
熊猫(プロフ) - るぶさん» るぶ様。優しいコメント本当にありがとうございます！今後も楽しんでいただけるように頑張ります。 (2021年9月6日 22時) (レス) id: 8e1b928499 (このIDを非表示/違反報告)
るぶ(プロフ) - 今すごく楽しませていただいてるお話です。楽しみにしております。頑張ってください！ (2021年9月5日 16時) (レス) id: 6e3ccbc5ee (このIDを非表示/違反報告)
熊猫(プロフ) - まめさん» まめ様。好きと言っていただけて本当に嬉しいです。これからも楽しんでいただけるように頑張ります！ (2021年8月31日 17時) (レス) id: 8e1b928499 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：熊猫 | 作成日時：2021年8月18日 16時
