マスカレイドは瓦解する ページ8
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「いえ、無敵ヶ原という人物に身に覚えはありませんが、通りすがりの釣り好き少年と最近仲良くなりましてね〜」
＿＿釣りのコツなどを教えてもらっています。
表情を変えることなく笑顔を絶やさずに、言ってのける趙金雲。
「……そうですか」
これ以上打ち明けてくれることはなさそうだし、とりあえず『無敵ヶ原』くんが仲間であることの確証が持てただけ良かった＿＿。
心の中である程度思考を働かせると、なんとも容易く追及するのを諦めた美琴は「話はそれだけですか？」と趙金雲に尋ねる。
「ええ。話は、これで以上です」
＊＊＊
「……こっちが本題、ってわけか」
顔を顰めて小さく呟いた美琴の手には、一つの白い紙袋。そして、隣を歩く李子文の手にも彼女と同様、白い紙袋が。
頭一つ分程小さな背丈の李子文は、不服そうな美琴を見かねて言葉をかける。
「すみません、美琴さん」
＿＿大事な試合が控えているのに、親分が頼み事しちゃって。
一つの紙袋を両手で大事そうに抱える李子文は、例の大きな被り物に素顔を包んだ奇妙な見た目とは裏腹に、懇ろな態度で彼女と共に宿舎の通路を歩く。すると美琴は無表情に、彼の奇天烈な被り物を見つめ、声をかける。
「大変だね」
「え……？」
「あなた、FFでも一緒にいたんでしょ？コキばかり使われてたんだろうな、って」
＿＿これだって、自分で行けばいいのにね。
自身の持つ紙袋の中身を、好奇心混じりにチラリと覗き込みながら、李子文と言葉を交わす美琴。しかし、それの中身を見た途端に「…なにこれ」と絶句する。
「ハガキ？」
美琴が大量に山のように詰め込まれた袋から試しに一枚だけ取り出すと、それは住所氏名がしっかりと記入されたハガキだった。
「これって？」事情を知っているであろう、李子文に尋ねると、彼は「えっと…」と少しだけ言葉を詰まらせる。
「好きな女優さんが主演の、ドラマDVDが当たる抽選に参加したいみたいで」
「……いつか、二人でストライキでも起こそっか」
「え！？」
「こんなの、ブラック企業と何ら変わらないでしょ」
「え！？」
「安心して、私たちが勝てるように弁護士さん付けるから」
「ええ！！？」
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作成日時：2019年1月26日 11時
