キミが彼で、彼がキミ ページ45
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「さっそく、インタビューしましょうか！」
二人が静かに液晶画面を見つめる中、テレビの特集は進み、いよいよ後ろのサッカーグラウンドで練習をする青年たちをインタビューするようだった。
アナウンサーがグラウンドへ向かうと、練習の邪魔にならないピッチのサイドラインで、取材を待つ青年がいた。練習をする選手たちを代表して取材を受けるであろうその一人の青年は、カメラとアナウンサーが近づくと軽く会釈をして微笑んだ。
「今回取材に応じてくれたのは、なんと吹雪士郎くんです！彼は、次世代を担うディフェンダーとして呼び声が高く、さらには母校白恋中ではキャプテンも務め、チームの統括にも力を見せている人物です」
これでもか、というアナウンサーのベタ褒め言葉の羅列にさえ照れや恥を表出することなく、笑顔を絶やさないテレビの中の彼は「ありがとうございます」と優しく笑う。
そして、テレビで取材を受けるそんな彼のシルエットが、現在時間を共にしているアツヤにどことなく似ていることを美琴は気づく。
「今回の練習はどういったことを目的にしておられるんですか？」
「今回は、中学3年生だけを集めた合宿を行っているんです。集められたメンバーのほとんどが各校のキャプテンで、今日からの3日間 技術や練習の工夫を共有して、最終的には北海道全体のサッカーテクニック向上を目標にしています」
「なるほど！昨日の敵は今日の友ってことですね！」
「はい、そうですね」
「……」
「なんだよ……」
美琴は液晶画面から視線を外し、ソファーに腰をかけて感情の無い表情でテレビを見つめるアツヤと、テレビ内で取材中の吹雪士郎を見比べる。すると、画面の人物と比較されていることに気づいた彼は、彼女にその視線はなんだ、と尋ねる。
「生き別れ…？ドッペルゲンガー…？」アツヤの苗字を知らない彼女は、画面に映る彼と目の前の彼がまさか兄弟であることを知る由もなく、他の可能性を頭に思い浮かべて首を傾げる。そして、そんな彼女たちの傍ら、テレビの中では取材が進む。
「弟のアツヤくんとの連携も期待されていますが、その辺りはどうですか？」
「そうですね、」
＿＿僕たちが負ける理由はありません。
確固な自信に溢れた瞳で質問に答える、画面の中の『吹雪』。
名前が発せられたことで、いよいよこのまま黙り通すわけにもいかなくなったアツヤは、見つめられている美琴から視線を逸らした。
「吹雪士郎は、俺の兄貴だよ」
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作成日時：2019年1月26日 11時
