赤いマントをすり抜ける ページ26
.
「西川、」
ハーフタイムも終わり、趙金雲からの指示を素直に従い、前半吹雪がいたポジションへと向かう美琴の背中へ鬼道が声をかける。
「どうかした？」
真剣でどこか緊張した面構えの鬼道とは対照的に、美琴はいつもと変わらず落ち着いた表情で振り向く。すると必然的に、彼女の視界にも重々しい雰囲気の彼が入ることになり、美琴は幾度か瞬きをした後「作戦？」と、とりあえず彼と意思疎通を試みることにしたようだ。
「……ああ、そうだな」
＿＿作戦、という言い方で強ち間違いでもない。
相変わらず強張った表情が緩めることもなく淡々と言葉を続ける鬼道に、美琴は何となく違和感を覚えたが、それの根本が何なのかを言及することもなく、ただ静かに会話を聞く。
「これから俺は、イナズマジャパンの裏切り者を、このゲームの後半で排除するつもりだ」
どこか怒りの篭った声音で言葉を連ねる鬼道の視線の行き先が、日本陣営の先陣であるFWポジションに向けられる。そしてそこにいたのは、先ほどのハーフタイムで何度か言葉を交わした灰崎と吉良であり、彼らが鬼道の言う『排除』への協力者であることを察した美琴は「…そう」と短く相槌を打つ。
「アイツ＿＿いや、アイツらは何らかの理由で日本を負けさせるつもりでいる」
＿＿例え、どんな汚い手を使ってでも。
大会序盤に負傷し、不本意ながらチームを一時離脱している炎の彼へと思いを馳せているのだろうか、鬼道はわずかに眉間に皺を寄せて話を続ける。
「だから、お前にもこの作戦への協力を願いたい」
「私が……？」
後半戦開始までの限られた短い時間の中で、ピッチ内で交わされている２人のやり取りを周りのイナズマジャパンメンバー＿＿特に風丸が不安そうに見守っていた。そして、そうこうしている間にも当事者である彼女たちの会話は刻々と進む。
「お前だって、どんな理由があるにせよ、日本が今ここで負けるのはおそらく本意ではないのだろう？」
数日前までは彼女が何者であるか＿＿それを追求することばかりに拘っていた鬼道だが、今日までの数日間で彼女への見方が変わった彼は、今までとは違った『言葉』で彼女に発破をかける。すると流石の彼女も、今回ばかりは彼の言葉に何かを感じ「そうだね」と、すんなり肯定する。
「でも＿＿＿＿
私は 鬼道くんの指示に協力するつもりはないよ」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 486人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時：2019年1月26日 11時
