わたしが選ばれた理由、それは３【オリオンの刻印】 (ページ24)

今日:6 hit、昨日:42 hit、合計:120,943 hit

黄のオオカミさんページ24

.

「おや、キミは」

今度こそ後半から趙金雲に参加するよう告げられた美琴は準備運動を軽く済ませ、ピッチに足を踏み入れる。するとオーストラリア代表のサタンは目を細め、彼女を視界に捉える。
今まで面識もなかった選手の接近に、美琴は辺りを見回し、声をかけられたのが自分であることを確認する。

「西川美琴、キミだよ」
「わたし、ですか……」
「ああ」

美琴の行動を察したサタンは、ほんの少し笑みを浮かべて彼女を呼び止める。呼び止められた当の彼女は、韓国戦でも覚えのあるやり取りに、なんとなく嫌な予感を感知する。

「なかなか出てくる素振りもなかったし、心配したよ」
「私のこと、ご存知なんですね」

……また監督が故意に情報を流したのだろうか。
そんなことを考えながら美琴は、自分の方に歩みを進めるサタンに話を合わせる。

サタンが足を止め、適度な距離で会話を交わす二人。しかし『適度』といっても、常人が考えるようなモノではなく、なんと二人の間の距離は約30cm。初対面の日本人同士では考えられないほどの近さまで詰め寄るサタンだが、きっと外国人の中での『距離感』とはそういうものなのだろう、と美琴は何とも適当に結論づけ、自分より頭一つ分程上にある彼の顔を見上げて話を続ける。
側からみたら二人は顔見知りの仲に見えるのだが、本人たち自身はあくまで初対面なのだから、この二人の適応能力とは恐ろしいものだ。

「話は十分に聞いているよ」
「……そうですか」

サタンは、日本側ベンチから感じていた鋭い視線に焦点を当てる。すると予想通り、そこには凄んだ表情の青い彼が。事前に財団から配られた資料の、右上に貼られた表情のない冷たい証明写真とは背馳する、感情剥き出しの現在の一星の姿にサタンは思わず笑みを溢す。

「君のところの彼、表情豊かで可愛いらしいね」

徐に美琴へと視線を戻したサタンは、上品な笑みを浮かべた。

ーーーーーー

サタンは、精神年齢も同年代の子たちに比べて高さそうなので
ちょっと大人な雰囲気で表現してみました(笑)

年齢は勝手に中学3年生だと思ってます()

.