離れない温もり ページ2
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『ヒロト、お前はあまりタツヤに迷惑かけるなよ？』
「ガキじゃあるまいし、んなことするかよ緑野郎」
「緑野郎……？」
ノイズ混じりの声と、その声と会話をする吉良の声が響く屋内グラウンド。
外で大谷の手伝いをしていた美琴は、イレブンバンドで突然呼び出されたため、やむ終えず大谷の元を離れ、呼び出した張本人である趙金雲を探しに偶然グラウンドに来ていた。
美琴は息を殺し、声のする方へゆっくりと近づいていく。
「大丈夫だよリュウジ。こっちには砂木沼もいるんだから」
『砂木沼は大して役に立たないだろうけどね』
「玲名、お前……！」
ここにいたのは吉良だけではないようで、他にも基山、砂木沼の声もあった。
美琴はこっそり柱から顔を出して声の聞こえるピッチを覗くと、そこには先ほど名前を挙げた三人が仲良くスマホを囲んでいる姿があった。そんな姿が物珍しく思えた美琴は、もうしばらく様子を見ようと思った。
「……んで、親父はどうだよ」
『理事長？理事長なら元気にしてるよ』
「そうじゃねぇーよ！……俺たちの姿見てくれてるのかよ」
「ふふっ、」
「あ"！？」
「あっ……」
不意打ちで現れた吉良の家族思いな姿が、美琴には微笑ましく思えて無意識に笑みをこぼす。すると当然、彼女がこぼした声に気づいた彼らは、一斉に振り向く。既の所でうまく隠れられた美琴は、再度息を殺して身を潜める。
「おい、そこにいんの誰だよ」
『タツヤ、どうしたのか？』
「あー……誰かに聞かれてたみたい」
「おい隠れてねぇで出てこいよ」
『別にいいだろ、好きなやつの話をしてたわけでもないんだしよ』
「いいや、そこにいるやつは俺のことを笑ったんだ！ぜってぇ許さねぇ！！！」
電話の相手たちは美琴の存在を何とも思っていないようだが、吉良がそれを許さない。
笑ったとは言っても、バカにしたように笑ってたわけでもないのに……。
ここにいる誰もが心の中でそんなことを思う。
『タツヤ、コイツいつもこんな調子なのか？』
「あ、ああ……うん」
『やれやれ……先が思いやられるな』
「あ！？ んだと！ねぐせ頭！！！」
電話相手も、吉良の面倒な性格に少し呆れているようだ。
＿＿＿＿そう。
基山も砂木沼も、緑ポニテもツリ目の美人もチューリップ頭もねぐせ頭も皆、美琴の盗み聞きのことを気にしていないのだ。
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作成日時：2019年1月26日 11時
