終速2メートルの恋

#36 ページ36

Side 建山






「...なにやってるの。」
林「答えてください。」






じり...と、奴の顔はどんどん近くなっていって

鼻と鼻が、ぶつかりそうになる






...なんでこの人は、選手なのにこんなにもいい匂いがするのか

奴から漂う甘い匂いに、頭がどうかしてしまいそうになる






林「俺のこと、避けてますよね？」
「...。」







ここで、






“避けてなんか、ないわよ。”







って、言えばいいものを







.






「....だったら、なに？」







嘘もつけない

素直にもなれない




自分に、少し腹がたつ






.






林「....はぁ、おれって、そんなに....。」
「....、っ。」





その瞬間、奴は私の肩におでこを乗せ、





.






林”頼れない、男っすか...？”

「っ、う.... 。」






.







“俺のこと、信じてみろよ。”

“悪いことは言わないから。”





“だったら、なんだ？”







.






「う゛っ ....。」
林「っ、大丈夫っすか....？」






その瞬間、私は喉を思い切り締め付けられたかのように、呼吸が苦しくなる






ふにゃふにゃと力が抜け、あっけなく奴の胸に倒れこむ






.









..








「ハァ、ハァ.....。もう、大丈夫...。離して....。」
林「....建山さん。」







どれくらい、体を奴に預けていたのか

こんなにも動揺することが久々で、自分でもびっくりしている




.







林「っ.....、建山さん、俺....。」







奴は、私をより一層抱きしめ






林”知ってるんすよ、もう....建山さんになにがあったのかさえ....。”





私の耳元で、呟く





.






なにを知ってるんだ、この男は





やめて









私の奥まで、付きまとおうとしないで

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