全部盗んで、怪盗さん【2j3j】

#ほんのちょっとの勇気 ページ27

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渡「じゃあAちゃん、またな！」

『…うん、またね』



なかなか話を切り出せないでいたらあっという間に解散場所に着いちゃって。折角凪さんに勇気を貰ったのに、と少しだけ泣きそうになる。

私に気づかず、どんどん遠くなっていく背中が嫌で、私は渡会さん、と掠れた声で呼んだ。気づいてくれないよな、と半ば諦めていた。






なのに、






渡会さんは気づいてくれて。
そういえば風楽さんが耳がいいって言ってたっけ。





渡「Aちゃん？どした？」

『…えっ、と……』

渡「ゆっくりでいいから」

『…連絡先…教えてほしい…です』




私でも聞こえるか聞こえないかの声量。目を合わせて言えなかったから、恐る恐る渡会さんの顔を見る。渡会さんは驚きと、どこか嬉しそうな顔をしていた。そんな顔しないで欲しい。もしかしたらって変な期待をしちゃうから。





渡「ん、LINEでおけ？」

『…いいんですか？』

渡「Aちゃんならいーよ、友達だし」

『ありがとう、嬉しいです』




お互いスマホを取り出して、LINEを交換する。あっさりと交換できてしまったことに少し驚いた。客と連絡先交換なんて、普通ならダメなんだろうな。少しの罪悪感が心を黒く染めた。

LINEの友達に追加された「渡会雲雀」という文字を見るだけで自然と笑顔になる。嬉しい。




渡「俺ら知り合って1年経つのにLINE交換してなかったのなw」

『ですね〜…びっくりw』

渡「LINEでカフェ来れる日とか送ってな！待ってるわ！」

『分かりました！渡会さん、気をつけて』




そう言って手を振って渡会さんを見送る。完全に姿が見えなくなってから、その場にしゃがみ込んだ。めちゃくちゃ大きなため息をつく。嬉しくて嬉しくて、今にでも叫んでしまいそうだった。




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渡「あっちから言ってくれるとか…嬉しすぎ」




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