姉さん、愛してる。Ⅰ (ページ6)

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姉愛［06］｡生命前兆｡ページ6

　
　
　
｢ゴホっ、ゲホ…！｣

最近、母さんの体調が前にも増して酷くなって来ている。常時顔は真っ青だし倒れることもしばしば。

なるべく側で支えるようにはしているが……。

｢母さん、お水飲んで｣

｢っ…ありがとうAちゃん｣

｢ううん｣

辛そうに、震える手でコップを受け取る母さん。

そろそろ病院に入れた方がいいんだろうが。
あのクソ親父がなかなかそれをしない。

何度も何度も頼んでるのに。

｢母さんを入院させて｣って言う度、殴られ、蹴られる。理不尽を通り越して極悪非道だ。殺意しか芽生えない。

………いつか殺してやる。

｢Aちゃん｣

｢何？お水まだ飲む？｣

少しやつれた母さんの頬を、優しく撫でる。

｢いいえ。…Aちゃんはその髪が嫌い？｣

｢え？｣

不安気に問て、私の赤い髪に恐る恐る触れた母さんに戸惑いを隠せない。

少しだけ目を見開いたと思う。

｢どうして急に｣

｢Aちゃんのこの赤い髪、
私は正直……怖いと思ってる」

……………。
チクっとした。

｢でも、でもね。その反対にとっても綺麗で愛おしいとも思ってるの｣

｢！｣

目許をそっと和らげて私の髪に手を通す母さん。その顔は、本当に優しげで。

女神様みたいに輝いていた。

｢綺麗…？こんな赤髪が？｣

｢そう。Aちゃんは、あの人と同じだから嫌っているかもしれないけどね。私は大好き｣

壊れ物を扱うように。そっと頭を撫でられる。

｢だって、その髪はAちゃんで。あの人じゃないもの。私はね、その赤毛はAちゃんだから綺麗だと思うのよ｣

｢……………母さん｣

やっぱり。やっぱり母さんだけだよ。

私の中で明るく存在し続けてくれるのは。

冬美姉さんや兄さん達でも、ずっと明るく輝いていてはくれないんだ。

消えちゃうんだ。

でも母さんは。
母さんだけは……。

｢母さ──｣

バタっ。

………か、あさん？

｢母さん母さんっ！母さん…！｣

いくら体を揺すっても起きない。

額から汗が止めどなく吹き出して。
とっても辛そう。呼吸も異常に荒い。

母さんが…母さんがっ！

｢Aさん？どうしたの？｣

｢っ婆さん！母さんが……｣

｢まぁ大変！早く病院に！｣

慌てて近くの子機を手に取り病院に電話をかける婆さん。倒れる事は以前にもあったけど、ここまで苦しそうなのは初めてだ。

弟が生まれるまでまだ5ヶ月程あるのに。

こんなに辛いものなんだ…。

私の時も、こうだったの？

｢母さん………｣