姉愛［49］｡変人巣窟｡ ページ49
｢はぁー……｣
深い深い溜め息が空気に溶ける。
疲労に更なる拍車をかけられた今日のあの出来事を思い浮かべるだけで頭がかち割れそうだ。その内私爆発するかも知れない。
面倒臭いメンバーこれで何人目だっけ。
涼チビにオールマイトにひざしに颯輔。
プラスあの丸頭。
……もう片手じゃ足りなくなってしまう。
何で私の周りにはまともな奴が居ないんだ。
結局あの後勝手に話を進められ私は強制的に彼の主と言う事になった。らしい。
｢俺のことは梛とお呼び下さいAさん。何か御用があれば名前を呼んで貰って大丈夫です。すぐに飛んで行きますので｣
とか言って連絡先も交換させられた。
あんな数秒で性格変わりすぎでしょ。
変人だ変人。涼チビに負けず劣らずの。
買い物の帰り道。
愚痴りながら商店街の端を歩く。
｢ひったくりだー！ 誰か捕まえてくれー!!｣
男の声が私の耳を突き抜けた。
ストレスで一杯の私の脳内と共に。
｢呆れる………｣
ノロリと視線を上げる。
こちらへ走って来るひったくり男を視界に捉えた。
｢退けえええぇー!!｣
｢きゃあっ子供が！｣
刃物構え威嚇するひったくり男。
その男の目先に動けず蹲っている女の子が居たらいくら苛付いていても。面倒臭くても怠くても。
｢助けに行くしかないでしょ｣
ダっ！
仕方なく地面を蹴る。
両手の荷物は上に放り投げた。
手が空いたので。
地面に両手をつく。
そのまま。
男の頭上まで飛び上がる。
｢カチ割ろ｣
ズドっ!!
｢ああああ!!?｣
男の脳天に踵落としを見舞った。
綺麗に着地をキメると、タイミング良く降って来た荷物をしっかりキャッチする。
｢私の手を煩わせないでよね｣
倒れる男を軽く足蹴にしてから。
静まり返る商店街を後にした。
｢個性無しでもある程度は武術で大丈夫かも｣
なんて。呑気に呟いて。
｢ハァ…っ。真作だァ……｣
私を妖しげな笑で見つめる
彼の眼差しには気付かなかった。
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作者名：よる。 | 作成日時：2016年9月21日 16時
