姉さん、愛してる。Ⅰ (ページ45)

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姉愛［45］｡安心決心｡ページ45

｢俺ヒーロー科目指すわ｣

治嗣がそう決心してくれた。

だから私は、満たされた暖かい心を感じながら安心して家路に着く事が出来た。

彼はいつもいつも自分の気持ちを押し殺す。思ってもいない事を言ったりしてよく意地を張る。そんな強情な彼がやっと。

｢良かった｣

ホっと息を吐いた。

所詮は他人の筈の彼だと言うのに。
何故だろう。本当に不思議だ。

そうだ。最初は唯の他人だった。

確かに付き合いは4年とかなり経っているけど。

｢平和ボケかな｣

以前はこんなに甘い人間じゃ無かった。

人を抱き締めたり。

態々言葉をかけたり。

他人を気にしたり。

……人を愛したり｡

焦凍が生まれてから。
焦凍が現れてから。
焦凍の笑顔を見てから。

｢全部が180度変わったな｣

呟いて、天井に手を伸ばす｡

指の隙間から射し込む電灯の光が眩しくて。

思わず目を閉じた。

｢Aお姉ちゃん｣

｢……焦凍？どうしたの？｣

襖を開ける音と私を呼ぶ声がした。

すぐに顔を上げ焦凍の姿を捉える。

襖から少しだけ顔を覗かせ、私の様子を伺う我が弟は一体何を考えているのだろう。

｢えっとね…あのね………｣

枕をギュッと抱き締める焦凍。

目を泳がせほんのり頬を染める。

何を照れているんだこの子は。

｢お姉ちゃんと一緒に、
寝たいなって思って……｣

｢私と一緒に？｣

｢う、うんっ…｣

頷く焦凍の頬がブワっと赤味を増す。

それが何だか可愛らしくて。

｢おいで。焦凍｣

衝動的に突発的に。
触れたくなった。

腕を広げ笑顔で。でも真っ赤な顔のままコチラに走って来た焦凍を受け止める。その反動で背中から後ろに倒れ込んだ。

……………下に布団敷いてて良かった。

｢お姉ちゃん大好き｣

｢そう｣

｢ねぇお姉ちゃん｣

｢ん？｣

上目遣いを発揮する焦凍の頭を優しく撫でた。

すると、心底幸せそうな笑顔で口を開く。

｢僕大きくなったらお姉ちゃんと結婚する！｣

え。

｢僕がお姉ちゃんを幸せにするの！｣

冗談でもなければ子供の戯言でもない。

本当にそれを強く願って言ってるんだ。

でも姉弟で結婚は出来ないし………。

｢お姉ちゃんだけは絶対。誰にも渡さないから｣

目がマジだ。
本気と書いてマジだ。