姉愛［38］｡無無無無｡ ページ38
no-side
Aと炎司の衝突から1年2ヶ月が経過した。
背中の火傷に加え打撲、多少の骨折を負ったAはすぐさま病院に運ばれた。その後精神状態も危険だと判断された為1年間の病院生活を送る事になった。
その間も焦凍は毎日の様にAの見舞いに訪れ、懸命に励ましかけていた。
今日やっと、Aは退院する。
｢お大事になさって下さいね轟さん｣
｢はい。有難うございました｣
看護師に頭を下げ荷物を背負う大人びた少女。
言わずもがな11歳に成長した轟Aである。
｢…………｣
舞い散る桜の花弁を目を細めて見やるA。
儚さがこれ程似合う少女は他に居るまい。
｢おっすA嬢｣
そこへ、クラクションを鳴らしながらやって来たハンサムな高級車。から顔を出す茶髪。
｢颯輔。何で君が｣
｢今からチビ助の入学式だろ？ 此処から小学校まで遠いし送ってやろうと思ってさ｣
人の良い笑顔で答えてから｢ほら乗って｣と促す。
ガチャ。
Aは表情を変えず、後部座席に腰掛けた。
ブリキのような彼女の反応に顔を歪める颯輔。
｢………ごめんなA嬢｣
｢何で颯輔が謝るの｣
｢だって俺、俺は…｣
苦痛に脳天を貫かれたように眉を曲げる颯輔の横顔を、Aは以前にも増した無の表情で見つめる。
彼女の心から一切の色彩が消えていた。
｢別に貴方が気にすることじゃない｣
｢………はは。それが一番つれーよ｣
空笑いを漏らす颯輔。
｢チビ助だって、左目んとこ大火傷しちまったしさ。ちゃんと見てればあんな事には｣
掘り返しが止まらない。
悔しさが咲いて枯れない。
Aを最も愛していた母。
焦凍を守り続けていた母。
その母親が精神を病んでしまったことは仕方ないといえば仕方ないのかも知れない。娘の悲惨な状況に壊れてしまっても、とても咎める事は出来ない。
Aはその事実を割り切ろうとまた葛藤した。
｢………。それより早く焦凍に会いたい｣
言うと、再び外へ視線を戻した。
｢Aお姉ちゃーん!!｣
ようやく見えてきた小学校の門前には、
笑顔で精一杯手を振る焦凍の姿があった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1433人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よる。 | 作成日時：2016年9月21日 16時
