姉愛［25］｡何故真黒｡ ページ25
かつきside
今日はAさんが家に来る日。
今からワクワクが止まらねぇ。
｢なぁなぁババア！｣
｢お母さんでしょ!!｣
パアァンっ！
鬼みてぇな顔で俺の頭をぶっ叩く。
｢ってぇな叩いてんじゃねぇよクソが！｣
｢アンタがババアなんて言うからだろ!!｣
パアァンっ！
っんでもう1発入れんだよ!!!
叩かれた頭を抑えてソファに蹲る。
相変わらず容赦ねぇクソババアだ。
Aさんと交代しろよババア。
｢そんで何？ 用でもあんの勝己｣
｢はっ無きゃテメェなんか呼ばねぇわ」
｢っんだとこの馬鹿タレ小僧がぁ!!!｣
ババアに両頬を鷲掴みにされる。
ちょっと力強ぇーからってこの野郎!!
｢今日だほAはふが家に来ふひ！｣
ババアに両頬を掴まれたまま無理に叫んだ。
ハっとするババア。この間抜けめ。
｢そうだ！ 確か2時に来るって……。
やっば後10分しかないじゃないの!!」
言ってねぇで手離せ。
｢アンタ部屋片付けてきな!! 急いで準備しないと！｣
｢とっくに片付けてるわババアこそ早く準備しろ!!!」
｢だからお母さん!!｣
パアァンっ！
｢いって！｣
一々ぶっ叩くなよ!!
また蹲りそうになった俺を助けてくれたのは、待ち望んでいた機械音。ピンポーンと言うその音。
｢絶対Aさんだ！｣
何か知らんが喚いてるババアは無視して。
玄関目掛けて全速力で走って行った。
分厚い扉を開ると、いつもと変わらねぇAさんの綺麗な赤髪が目に入る。
俺の目と一緒の大好きな赤色。
｢Aさんいらっしゃい！｣
ギュっ。
抱き着けば包んでくれる暖かい香り。
｢Aちゃん久し振り。来てくれて有難うね｣
｢別に……｣
あれ？ Aさんの声が弱い。
どうしたんだろう。凛々しくない。
バっと顔を上げる。ここで初めて俺は貴女の瞳を目の当たりにした。
｢…………ぇ｣
バグみたいにフリーズした。
眼が。俺の大好きなAさんの瞳が。
まるで夜闇みたいに真っ暗だから。
｢さっ中入って！ アンタは一旦離れな勝己」
雑くAさんから引き剥がされる。
離せババア邪魔すんな!!!
いつもならそう叫ぶところだが。
あまりの衝撃に、口が動かなかった。
｢………？ 勝己？｣
｢おじゃまします｣
｢あっどうぞどうぞー｣
俺は突っ立ったまま。
呆然と心をハテナで埋めて。
哀に溢れた、Aさんの背中を見つめていた。
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作者名：よる。 | 作成日時：2016年9月21日 16時
