姉愛［14］｡西宮颯輔｡ ページ14
颯輔side
｢理由なんている？｣
お前はヒーローだろ？ なら分かるはずだ。
人を助けるのに、理由なんていらないって。
ヘラヘラ顔で言ってやると。
｢…チっ｣
不満そうな顔で俺を睨む。
｢それにしても｣
振り返り、小動物の様に震える紅白髪のチビ助とぐったりとした様子のA嬢を見やった。ここは戦地かと思い違いしそうになる。
父親がやることじゃねぇだろ。
｢お前やり過ぎ｣
バチンっ。
｢！？｣
強めに炎司の頬を引っぱたく。
と、声にならないチビ助の驚愕声が微かに耳を通った。
ドス黒いストームが炎司を包み込む。
｢っ西宮｣
うっわ顔やべぇ。
｢お前もないったぁ!!?｣
殴っていいよって言い終える前にグーで殴られた。しかも頬じゃなく顔面。鼻痛いんだが。
少しは容赦を知ってくれ炎司。
｢お兄さん！｣
慌てて駆け寄って来たチビ助。
心配してくれてるらしい。
胸がほっこりと温まった。
｢西宮。お前はAの味方なのか｣
｢そうだよ。逆に違うと思う？｣
俺もそこまで馬鹿ではないんだし。
馬鹿みたいに笑って見せると｢その馬鹿面、昔のお前に見せてやりたいな｣と、呆れ半分感傷半分の溜め息をついて。
炎を消し道場を後にした。
｢………｣
お前もかなり変わったな。
悪い方に。無理に。
ったく見てる方が苦しい。
｢大丈夫だったかチビ助？｣
｢僕よりねーねがっ！｣
｢あっそうだな。よし｣
死人のように横たわるA嬢を軽々持ち上げる。華奢なラインに触れた瞬間、眉間にシワが集まった。
酷くやつれている。
｢………クソ｣
俺はいつも遅いんだ。
はぁ。無能だな昔から。
…今悔やんでも仕方ない。
｢大丈夫だチビ助。そんな顔するな｣
｢……うん｣
拙く頷いたチビ助になるべく優しく微笑む。
それから道場を出て、だだっ広い木造住宅内へ歩いた。最初は迷いまくったが10年以上遊びに来ていれば流石に覚える。
今じゃ熟知レベルだ。
｢ほれチビ助、襖開けてくれ｣
言えば、迅速にそっと襖を開ける。
随分聞き分けのいい子だな。
……炎司とまるで似てねぇ。
｢よいしょっと｣
消毒液を左手にガーゼを貼る。
そそくさと手当を進める俺の隣で、
俯いているチビ助に目をやった。
｢どしたチビ助？｣
無言を張り続けるチビ助。
一旦ガーゼを膝上に置き、自身の感情に大きく震わされるチビ助の頭に手を乗せた。
｢大丈夫。話してみ？｣
優しく優しく。
一杯に綻んだ。
｢…僕のせいでねーねが傷ついちゃった｣
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作者名：よる。 | 作成日時：2016年9月21日 16時
