姉愛［11］｡謝罪弁解｡ ページ11
焦凍が生まれて早いものでもう2ヶ月。
すくすくと元気に成長していく弟。喜ばしい筈の事だと言うのに私は、焦凍が眠るベビーベッドの前で項垂れていた。
そぐわない暗い漆黒の瞳で。
｢どうして……………｣
最悪の事実が判明してしまった。
｢焦凍……君は｣
やっと開いた焦凍の瞳は、私の大好きな黒い瞳と。私の大嫌いなエメラルドの瞳だった。
それだけに留まらず少し生えた短い髪も、
赤と白に左右別れているじゃないか。
神様は本当にどうしようもない糞野郎だ。
この惨状を観て嘲笑っているに違いない。
｢何でさ……｣
｢あーっう！｣
私に向かって精一杯手を伸ばす焦凍。
君は、君は分からないだろうね。
その右側がどれだけ美麗なのか。
その左側がどれだけ醜いものなのか。
｢うー？ あぅ？｣
……………。
｢そんな顔しないでよ…｣
｢むぅー｣
｢怒ってるの？｣
｢なーうぁっ！｣
薄雲みたいな毛布に包まっている焦凍を見つめる。君は、女神が私に届けてくれた希望なのに。
どこまであのクソ親父は。
どこまで私を抑圧すれば気が済むの。
何で、私と同じような醜い赤毛なの。
ねぇ、焦凍まで……。
焦凍まで、こんな私と。
｢同じじゃないか…っ｣
ギュ───。
｢…………！｣
…焦凍？
｢うむぁー！｣
｢何で、私の髪掴んで｣
｢だーぅっ｣
まるで、
否定するかのように。
｢だぁう！｣
違う。違うよって。
私に言ってるみたいで。
｢あぅあー！ だっ！｣
“醜くなんてないよ”
って。言われているようで。
｢焦凍……｣
｢あぅっ｣
そうだ、そうだよ。
母さんにも言って貰えたじゃないか。
この髪は、この赤毛は私であって
クソ親父じゃない。綺麗なんだ。
｢焦凍ごめん。醜くなんてなかった。綺麗だったね。君のその、エメラルドの瞳も半分だけの赤い髪も｣
そう、頭を撫でてやる。
｢だー！｣
｢うん。とても綺麗だよ｣
｢あぅ！｣
その時焦凍が、少し笑ったように見えた。
赤ん坊が言葉を理解するなんて思えないけど。
その時焦凍は、私を真っ直ぐ見てくれていた。
君が大きくなるのが楽しみで仕方ない。
早く成長した君と話してみたいよ。
きっと母さんに似て、
綺麗な子になるんだろう。
｢本当に…楽しみだ｣
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作者名：よる。 | 作成日時：2016年9月21日 16時
