姉さん、愛してる。Ⅰ (ページ8)

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姉愛［08］｡迅速対応｡ページ8

　
　
翌日。午後1時23分。

昼食に手を付けることなくのっそりのっそり。
息を潜ませつつ玄関への廊下を歩む私。

もう少しだ。フっと安堵した矢先。

｢何処へ行くつもりだA」

………見つかってしまった。

今日こそ母さんの居る病院まで行ってやろうと思ったのに。

もう失敗に崩れ落ちるとは。早過ぎるだろ。

とにかく誤魔化そうと姿勢を正し直す。

｢別に。外の空気吸おうと思っただけ｣

｢ほぉ、本当にそれだけか？｣

………チっ。

しょうがない。

｢母さんのとこ行こうと思ってたんだよ｣

｢矢張りか。行くなと言ったはずだが？｣

どう言うつもりだ。

私を鋭く睨み下ろすクソ親父。

これは、随分面倒臭い事になった。
さてどう切り抜けるか……………。

｢まぁいい。特別に許してやろう」

｢！？｣

予想外の答えにパっと目を瞠る。

あのクソ親父が許してくれた…？

頭でも打った？それともイカれた？

｢何を固まっている。
行くならさっさと行け｣

｢……言われなくても｣

即座に背を向け再び玄関へと歩き出した。

家を出る寸前｢晩の鍛錬は今まで以上に厳しくなるぞ｣と言う親父の声が、確かに聞こえた。

その声には、少し冷笑が含まれていて。

普通ならゾッとするんだろうが私は違う。

母さんに。母さんに会えるなら。

私は何だってしてやる。
何だって出来るんだ。

プルルルル。

｢電話……？誰｣

馬鹿みたいに1人意思を反芻していたら、
懐に仕舞っていたそれが着信を知らせた。

すぐ取り出しデイスプレイに目を落とす。

『冬美姉さん』と表示されていたので、秒に満たない速さで応答した。

｢もしもし｣

『A!! 今すぐ病院来れる！？』

かなり焦った様子の、冬美姉さんの声。

私はそれだけで何があったかを悟った。

母さんだ。母さんに何かあったに違いないと。

｢今からすぐ向かう｣

『っうん…！お願い!!!』

携帯を強く握りしめたまま、駆け出した。

周りの目なんて気にならない。

早く。

早く。

早く早くっ。
行かなくちゃ。
待ってるんだ。

母さんと…………。

“私の”弟が───。