姉愛［236］｡瓜二彼等｡ ページ36
颯輔side
俺は暫くにっちゃん似の少年を見つめていた。
けれど、少年は犬嗣達に介抱されると心底から申し訳なさそうに立ち上がって。グラントリノと共に奥の階段へ逃げるように下って行ってしまった。
｢…………はぁ｣
俺はきっと疲れてただけだ。
にっちゃんが生きている訳が無い。
あの少年は唯の他人の空似なんだ。
そもそも髪色も瞳の色も違う。そう。
｢にっちゃんはもう居ない｣
いっちゃんだって勿論………。
｢何暗い顔してるんだ颯輔？｣
項垂れた頭上からそんな声が降ってきた。
｢…………あぁ犬嗣｣
｢やつれてるが大丈夫か？｣
｢うん。一応大丈夫。うん｣
ヘラっと作り笑いを浮かべる。
鋭い犬嗣でさえ、何10年も演じ続け偽ってきた俺の演技は見破れないらしい。｢ならいいんだワン｣と肩の力を抜いた。
助演男優賞貰ってもいいんじゃね俺。
｢このままいつもの居酒屋行くワン｣
｢んお。いいね。俺車出すよ｣
丁度車で来てたからさ。
背を向けてから付け足し駐車場へ向かった。
愛車に駆け寄りすぐに乗り込む。
シートベルトを締めながら、遠慮がちに俺の隣に腰を下ろす犬嗣を見やった。
｢なぁ犬嗣｣
｢何だ？｣
｢……あの黒髪の子、名前なんての？｣
性懲りも無く何を聞いてんだ。
馬鹿。にっちゃんであって欲しいとか思ってんじゃねぇよ。甘えんじゃねぇよ。
自然と、ハンドルを握る手に力が入る。
けれどもし。もしもにっちゃんなら。
にっちゃんと何かしら繋がりがあるなら。
あの子の名前が
………お願いします。
｢んー。確か巳沸騰亜君だったかな｣
｢……そう、いい名前だね。羨ましいや｣
期待なんかするもんじゃないな。
落胆する俺の隣で犬嗣が｢そう言えば｣と手を叩いた。
｢あの子、颯輔の名前を聞いた途端苦しそうに胸を抑えて倒れ込んだんだ｣
心臓が大きくバウンドした。
｢そ、それって｣
｢理由はよく分からなかったが、
とにかく辛そうに息をしててな｣
それは、それはつまりどう言う事で？
俺の名前を聞いてそうなるって事はやっぱり何かしら関係があるんじゃ。
にっちゃんにもう一度だけでも会える？
ごめんねってちゃんと言えるのか………？
｢そ、その騰亜君って子他に何か言ってた？｣
前髪で隠れた額でぬるい汗が伝う。
暫く間を置いて、犬嗣はこう言った。
｢鼻声で“二乃宮”と繰り返してたよ｣
────。
泣きたくなった。
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よる。(プロフ) - 鈴里風夢さん» コメントありがとうございます！作品を好きになって貰えてとっても嬉しいです(`・ω・´)これからも頑張ります！続編行きますよー！！！ (2017年10月20日 18時) (
レス) id: 01ec13c248 (このIDを非表示/違反報告)
鈴里風夢(プロフ) - すごくおもしろいです！！この作品大好きです！続編楽しみに待ってます！！ (2017年10月17日 1時) (レス) id: 442db9e64e (このIDを非表示/違反報告)
よる。(プロフ) - りんごさん» り、りんごさん…！いつも熱い応援ありがとうございます(´；ω；`) 遂に６ですね…早いものです… これからも頑張ります！私もりんごさん大好きですよ！！ (2017年10月13日 13時) (レス) id: 01ec13c248 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - あわわわわ、遂に６になるのですね。凄いです・・・！よる。さん、愛してます←ぇ ごめんなさい、大好きです。はい。これからも読み続けます！では！ (2017年10月13日 1時) (レス) id: 1a1ba15a63 (このIDを非表示/違反報告)
よる。(プロフ) - 黒猫さん» コメントありがとうございます！この調子で頑張っていきます！物凄い亀更新ですぜひぜひ待ってやって下さい… 頑張りますー！！ (2017年10月12日 20時) (レス) id: 01ec13c248 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よる。 | 作成日時：2017年7月24日 16時
