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「アトラクションはほとんど乗ったな、あと残っているのは…」

パンフレット片手に剣持が指差した方向にあったのは観覧車。
この遊園地のメインとも言える大きな観覧車だった。

「乗るん?」

ベンチの背もたれに体を預けながら椎名は剣持に問う。

「僕はどっちでもいいよ。椎名は?」

「んー…」

椎名は空を見上げながら考えた。
正直、怖いのはもう勘弁だし肉体的にも精神的にも疲れていた。
だが、まだ遊びたいという思いが椎名の中にあり、椎名のその思いは思ったより強かったみたいだった。

「乗るか」

その言葉はほとんど無意識に出ていた。

「分かった。…じゃあ行こうか」

沈みかけた夕日を背に、剣持は椎名へ手を差し伸べた。





「…椎名。今日、楽しかった?」

ゴンドラに乗り込み少しした頃、ふと剣持が呟いた。

窓から差し込む夕日がキラキラと輝いていた。

「まあ、悪くはなかった…な」

「そう。よかった」

気まずそうに答えた椎名は剣持から目をそらして夕日を眺めた。

「…なぁ、なんで剣持は今日アタシを誘ってくれたん?」

今度は椎名が剣持に質問をした。
純粋な疑問だった。

誰とでも仲の良い剣持ならば、一緒に行く相手はいくらでも居ただろうに。何故、自分を選んだのか。

そして返ってきた答えは、椎名の予想と反していた。

「なんで…うーん、嫉妬?」

「え?」

嫉妬。
予想外の言葉が椎名の頭の中を埋め尽くす。

「そんな大した理由じゃないよ。茜が僕より椎名と仲良くなっているのが気にくわなかっただけ」

剣持はそう言ってふふ、と笑った。

その時にはもう、椎名の心は奪われていたのかもしれない。


観覧車を降りる頃にはもう夕日も沈み、二人の初デートは幕を閉じた。

7.西城家→←・



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もめん - えのきんきんさん» ありがとうございます! (2022年4月25日 0時) (レス) id: 0e89e6a4c8 (このIDを非表示/違反報告)
えのきんきん(プロフ) - 最高です……!! (2022年4月23日 22時) (レス) @page33 id: 4af4b18def (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もめん | 作成日時:2022年2月20日 1時

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