【2434】もちもち霊媒事務所【mcmc】 (ページ4)

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「え？だ、大丈夫ですか？」

剣持がうつむいてしまった椎名に優しく声を掛けるが今の椎名はそれに答える余裕はなくうつむいたままだった。
剣持が困ったような顔をしていると剣持の隣に居たヤンキーが椎名のことを思い出した。

「剣持、コイツアレだ。例の留年のヤツ」

留年のヤツ。いつもの椎名ならば全く響かない言葉だったが、今の椎名にとってその言葉は苦しかった。
そして、このタイミングで椎名はあることを思い出した。

剣持刀也、椎名はその名前を聞いたことがあった。
今年の入学式のときに、剣持は二年生代表で演説をしていた。
ステージの上に立ち喋る言葉は綺麗事だらけだったが、体育館の端で椅子に座ってステージを眺める椎名とステージの上で演説をする剣持。その姿はあまりにも対照的で椎名は胸が苦しくなったのを覚えている。

椎名が唇を噛んでうつむいているとヤンキーの生徒がふと口を開いて言った。

「そういえば、お前って霊が視えるとかいう噂あったよな。お前も今日来いよ、肝試し。」

「…は、？」

突然すぎる言葉に、椎名は顔を上げた。
何か反論しようと口を開くが、何も思いつかず、言葉にならず口を閉ざした。
無言を肯定と見たのかヤンキーの生徒は「遅れんなよ」と言って時間と集合場所を伝えて去って行った。
剣持は、その後を着いて行こうとしてチラリと椎名のほうを見た。
椎名は、目を見開いて立ち尽くしていた。
剣持は、椎名のその目に恐怖と絶望が詰まっているように見え声を掛けようとしたが、止めた。

そして椎名の肩のほうを視た。
黒い、ナニか。

「(あんなモノ肩に乗せて、よく生きてますね。本当に人間ですか？)」

剣持はその黒いモノを喰らおうとして…止めた。

「(否…まだ祓う時じゃないな。やめておこう。)」

喰らいはしないが、威嚇程度に。と剣持は椎名に近づいて来ていた低級の怪異を指を鳴らして祓った。
剣持はスゥと目を細めて笑った。その目は、赤色だった。

剣持刀也は、？？？であった。