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「…今日は退くわ、後で後悔しても知らないから」
茜はそう言って立ち去っていき、その姿が見えなくなったところで剣持は溜め息を吐いた。
椎名を待たせてしまったな、と思い少し足早に教室へと進む。
教室の窓は開けられており、そこから椎名の姿が見える。椎名は、真剣な表情でスマホの画面を見つめていた。
「…椎名」
剣持がそう呼び掛けると椎名はパッと剣持のほうを向いた。
椎名は何か言おうと口を開くが、言葉にならず口を閉ざした。
まぁ無理もないよな、と剣持は心の中で納得した。
茜と剣持が話しに行く前、剣持は椎名に依頼内容の資料を送っていた。
もちろん、西城茜の資料も含まれている。
「…椎名、気づいていたんでしょう本当は」
剣持のその言葉に椎名は顔を歪めた。
実際、気づいていた。初めて茜と対面した時から、椎名は茜が人間ではないことに気づいていた。
「…っ信じたく、なかったんや」
泣きそうな声でそう呟く椎名。
剣持と二人で初めて除霊した七不思議。椎名はあのときと一緒で、茜は悪い怪異ではないと信じたかったのだ。
でも実際は、そうではなかった。
「あてぃし、馬鹿みたいや…前もこんなことあった。結局、居らんのや。友達なんて」
椎名の脳裏に映るのはパンダのフードを被った少女。
椎名の親友であった彼女は、突如姿を消した。周りの人の記憶も、なにもかも。
覚えているのは椎名だけだった。椎名だけ取り残された。
「…ほんっま、馬鹿やな。あてぃし」
そう言ってフッと笑う椎名に、今まで黙って話を聞いていた剣持は近づいた。
そして…
「…え、?」
椎名の頭を撫でた。
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もめん - えのきんきんさん» ありがとうございます! (2022年4月25日 0時) (レス) id: 0e89e6a4c8 (このIDを非表示/違反報告)
えのきんきん(プロフ) - 最高です……!! (2022年4月23日 22時) (レス) @page33 id: 4af4b18def (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もめん | 作成日時:2022年2月20日 1時