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「めっちゃ高いとこあるやん....

もー、誰?こんなとこに置いたん」


倉庫に到着して例の機材の箱を見つけたはいいものの、

想定よりもかなり高い場所に置いてあった。

一瞬、他の男性スタッフを呼ぶこともよぎったけれど、

自分と変わらない身長の女に頼まれても鬱陶しいだけだろうと

大人しく諦めた。


近くにあった備品の椅子に乗って精一杯背伸びをすると、

想像していたよりもすんなり手が届いた。

躊躇なく持ち上げた次の瞬間、

想像以上の重さに引っ張られて、身体がぐらりと傾く。

しまった、と思った時には手遅れで

せめて機材だけは守ろうと覚悟を決めて固く目を瞑った。


が、想定していた衝撃も痛みも訪れることは無く、

代わりに背中からすっぽり全身を包み込まれていた。


『あっぶな....。何してるん』

「え、リリーさん、?」


久しぶりに聞いた懐かしい声が耳元で聞こえる。

振り返ると、少し不機嫌な顔の想い人と目が合った。


頭をフル回転させて状況を把握する。

東京にいるはずの彼が何故かここにいて、

椅子から落ちかけたところを間一髪で助けて貰って、

そして私はリリーさんに全体重をかけて

のしかかったままだと言う事に漸く気が付いた。

お腹に回されていた腕を引き剥がして距離を取った。


「ご、ごめんなさい!!!あの、どこか怪我してないですか?」


不機嫌な彼の表情を思い出して顔が上げられない。

先程の恐怖とは別の意味で体温が冷えていく感覚がした。

あの時、もし少しでもタイミングが違っていたら

リリーさんにも怪我を負わせてしまっていたかもしれない。

考えれば考えるほど自分が不甲斐なくて涙が滲んだ。

・→←特権的距離感/Lily



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あんこ(プロフ) - 見取り図が好きなのでどちらもドキドキしました!🫶🏻特にリリーさんの話でコンプレックスが出ちゃうシーンとかすごいよかったです!夜中さんのペースでいいですので更新楽しみにしてます✨ (2月15日 12時) (レス) id: 262806c1af (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夜中 | 作成日時:2021年6月21日 9時

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