今夜も君と見る夢を望んでしまう (ページ4)

今日:54 hit、昨日:47 hit、合計:41,726 hit

・ページ4

小学校に上がるまでは気兼ねせずに伝えられていた

『好き』の言葉も、

晋ちゃんに初めて彼女ができたあの日からずっと封印している。

もし今ここで、晋ちゃんに想いを伝えたら何か変わるだろうか。

そう考えてみるだけで、結局いつも行動には起こせなかった。

そんな私の想いは露知らず、

晋ちゃんは今日もいつも通りだ。

いつも晋ちゃんに会うためだけに

早起きして髪巻いてんねんで？知らんやろ。

きっと一生気付いてもらえない背伸び。

少しの恨めしさと気付いて欲しい期待を込めてじっと睨むと、

「何やねん、なんか頼みたいんか？」

そう言ってメニューを渡されて、

『もう晋ちゃんなんか知らん』と机に突っ伏した。

「お前何で拗ねてんねん。よう分からんなぁ。」

そう言って私の頭をわしゃわしゃと撫でる。

昔から変わらない大きな手。

それが妙に落ち着いて、たったそれだけで

すっかり機嫌を直してしまう私は相当単純だ。

「お前髪伸びたよなぁ。昔なんか真っ黒でおかっぱやったのに。」

『昔っていつの話しとるん！

おかっぱなんか小学校で卒業したわ！』

「いつからそんな伸ばすようなったっけ？」

『えー、いつからやろ？あんまり覚えてへんなぁ。』

「服もヒラヒラしたんばっかり着るようなったしなぁ。

それこそ、俺とおる時くらいもっと適当な服でええやろ。」

『.........晋ちゃんとおる時やないと意味ないし。』

「ん、何言うたん？」

『別にー？』

濁した言葉を誤魔化すようにビールを煽った。

本当は、髪を伸ばした時期も理由も全部鮮明に覚えている。

晋ちゃんが好きな子の髪が長かったから。

昔からアナウンサーさんみたいな清楚な子が好きって聞いたから。

髪を伸ばしたのも、

慣れないメイクを頑張ったのも、

できるだけスカートを履くようになったのも

全部晋ちゃんが理由だった。