今夜も君と見る夢を望んでしまう (ページ3)

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『お待たせ！今日もお勤めご苦労さん！！』

「お前いっつも言うてるそれ何なん？」

いつもの時間。いつもの居酒屋。いつもの席。

開口一番にそう言い放って彼の向かいに座る。

「お前今日もむっちゃ笑っとったな。

生まれて初めて漫才見たんかと思ったわ。」

『何よその例え笑

え！ていうか晋ちゃん見えとったん？』

「そら、あんな目の前の席おったら

探さんでも勝手に目に入ってくるやろ。」

『またそんな照れ隠しして～

ほんまはちょっと探したんちゃうん？』

「探してへんわ！はよ頼む物決めろって」

『痛った！か弱い乙女にデコピンは無しやろ！！』

月に1回。公演終わりのお疲れ様会。

こんな子供みたいなやり取りを

晋ちゃんとは会う度に飽きもせず繰り広げている。

私はこんなくだらないやり取りで

晋ちゃんと笑い会っている時間が大好きだ。

晋ちゃんの漫才を見てる時くらい。

私より四歳年上の晋ちゃんは、

いつも私の憧れで一番だった。

幼稚園生の頃は晋ちゃんと同じ小学校に行くと

駄々を捏ねては母と晋ちゃんを困らせていた。

小学校に上がっても、晋ちゃんはすぐに中学生になって、

中学生に上がっても、晋ちゃんは高校生になって離れて行ってしまう。

どれだけ努力しても四歳の差は永遠に埋まらなかった。

大人になった今でこそ、

当時ほどの大きな距離感は感じないけれど

それでも矢張り出来ることなら

晋ちゃんと同い年になりたかったと、無い物ねだりをしてしまう。