今夜も君と見る夢を望んでしまう (ページ17)

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ありきたりの行方/S.Shogo ページ17

「......なんでおるん」

『何よ、おったらあかんの？』

今春から東京に拠点を移した同期との久しぶりの仕事。

先月まで単独ライブで全国を回っていた私たちコンビと、
劇場にもテレビにも引っ張りだこの彼らの再会は実に数ヶ月ぶりだった。

が、東京進出への激励の言葉でも送ってやろうと浮き足立った気持ちは、その一言であっという間に現実へと引き戻された。

元より不機嫌な顔付きが、眉間の皺のせいでより一層酷いものになっている。

「コイツいつもこんなだらしない格好してんのかって思ってるやろ。いつもはこんなんちゃうからな。」

『何も言うてへんやん。疲れてるなと思っただけ。

最近ほんまに忙しそうやし』

「まあ、ぼちぼちな」

大阪の劇場でも何度も目にしたゆるいトレーナーに、

まだ整髪料のついていない少しだけ癖のついた髪。

目の下にうっすらと広がった隈が彼らの忙しさを物語っていた。

「それより、お前こっち来るなら先言うとけよ」

『ええ。なんでよ面倒臭い』

「.....俺にも準備ってもんがあんねん」

『何を準備することがあんのよ』

私の質問には答えず、まだ尚ブツブツ文句を垂れている。

”ただの同期に会うためやのに”

つい出かけた言葉は喉の奥にしまい込んだ。
一体どの口が言うつもりなのか、心底自分に呆れてしまう。

レースをあしらったおろしたての春服、
いつもより少し濃いメイク。
朝からしきりに前髪を気にしているのは私の方なのに。

そうだ。この”ただの同期”に会うためだけに、私は今日も新しい服に袖を通しているのだ。

もう何年も前からこの同期に恋をしている。