今夜も君と見る夢を望んでしまう (ページ16)

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真っ直ぐに気持ちを伝えてくれるリリーさんに

これ以上何も返せなくなる。

恋愛へのトラウマも、どうしようもなかったコンプレックスも

きっと彼なら全てを包み込んで幸せで上書きしてくれるのではないだろうか

そんな期待に掛けて、気付けば1歩彼の方へ踏み出していた。

「.......わ、私もリリーさんの事が好きです

リリーさんの恋人にしてください」

一度言葉にしてしまうと、抑えていた気持ちが上り詰めて

堰を切ったように涙が溢れてしまう。

そんな私を慰めるように、私を腕の中に閉じ込めて

愛おしそうに何度も涙を拭ってくれた。

「うう......ごめんなさい、」

『以外と泣き虫なところも可愛い』

「泣き虫じゃないです、リリーさんの事が好きすぎるからです.....

だからこの涙もリリーさんのせいです」

きっと彼は、その”可愛い”の一言が

私にとってどれだけ嬉しい言葉なのかまだ分かってない。

そんな軽々しく言わないでください！という気持ちを込めて、

ほんの少し勇気をだして拗ねた振りをしてみた。

『.....Aちゃんって付き合うとそんな感じ？』

いつもの余裕たっぷりな笑みで返されるかと思っていたのに

その顔はほんのり赤くなって、面食らっていた。

予想外の反応に、私もどぎまぎしてしまう。

『可愛すぎるやろ、』

「えっとリリーさん、そろそろ時間が.....」

『まだ大丈夫』

悪戯っぽく微笑んで更に強まった腕の力が愛おしくて、

私からも彼の背中に腕を回した。

背伸びをして、私よりも少しだけ高い彼の肩に顎を預ける。

ほんの数センチ。

この数センチの背伸びを受け入れてもらえることが、

私にとってどれだけ大切で幸せなことか。

きっと彼も知らないこのちっぽけな秘密は、これからもずっと独り占めしていたい。

私だけの特権なのだから。

＿＿＿＿＿fin