今夜も君と見る夢を望んでしまう (ページ14)

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「乙女やな〜笑それからずっと好きなんやろ？めっちゃ可愛いやん」

「そうやって揶揄うから言いたくなかったんです！」

「ごめんごめん笑」

まだニヤニヤしている濱家さんは、

誤魔化すように私の頭をぐしゃぐしゃと撫で回した。

中学生のような理由で数年前から引き摺っている恋心。

やり場をとっくに見失ったそれを捨てきれずにいる私。

もうそんな歳でもないのに、未だ少女の抜け切らない自身を

改めて実感してしまい、酷く恥ずかしかった。

どんどん顔に熱が集まるのが分かる。

「あとずっと口の端に米つけて怒っとるんもおもろいわ」

「嘘！！早く言ってくださいよもう！！！どこです？」

「ちょ、じっとせえって笑」

もうこれ以上追い打ちをかけないで欲しい。

心を折られた私は大人しく従って顔を差し出した。

揶揄う口調とは裏腹に、そっと優しく顔に触れた濱家さん。

一瞬、ベタな恋愛ドラマのワンシーンがよぎるも

相手が相手なので”あぁ、お父さんの手やなぁ”と関心するだけだった。

「リリーやったらええのにみたいな顔すな」

「なんで分かったんですか」

「思いっきり書いとったわ笑

.......なあリリー」

「え、」

濱家さんの視線に弾かれたように顔を上げると

いつの間にか隣にいたのは、今誰よりも会いたくなかった人。

『何しとるんですか』

息の上がった彼の表情はどこか不機嫌で、少し怖い。

胸の奥がざわざわした。

「ほら、お迎え来たみたいやで」

「え？え？濱家さん？」

『来て』

「あ、お会計.....」

言いきらない内にお財布からお札を抜き取ろうとしたリリーさんの手を阻止して、

どこか挑発するような意地悪な笑みを浮かべている濱家さん。

「もう済んでるから、行ってき？」

「え、あ、いつの間に....」

また少し悔しそうな顔をして一礼したリリーさんは

状況の呑み込めない私の腕を引いて脇目も振らずに進んでいく。

「濱家さん！すみません、ご馳走様です！」

ひらひらと手を振る先輩は

いつまでも愉しそうに笑っているばかりだった。