6話 ページ6
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「…今、いいか。」
授業が終わり、教室を出たAの前に現れたのは豪炎寺だった。
哀愁を秘めていた瞳は、今は炎が灯されたような決意に満ちていて。
Aはぱちり、とひとつ瞬きを落として、いつも通り優しく微笑み、もちろん、と返した。
空が少しづつオレンジ色に染る。
豪炎寺が静かに、それでも熱く決意の言葉を零す。それにAは優しく相槌を打ち、ゆっくりと話を聞く。その姿はまるで慈愛に満ちた母親のようで、豪炎寺はぴたり、と止まりAを見て目を細めた。
「お前のおかげなんだ。」
『え…？』
「あの時、お前の言葉が気づかせてくれた。ありがとう。」
『──違うよ。君自身が乗り越えたんだよ。君の力でね。』
ぴたり、と止まったのは河川敷の橋の上だった。
そう微笑むAに何故か豪炎寺は懐かしそうな切なそうな表情を浮かべた。
豪炎寺は視線をAの後ろに逸らす。それに釣られるようにAは後ろ、河川敷のサッカーフィールドに目を向ける。
後ろから何かが飛んでくる気配に振り向いて胸でトラップする。殆ど無意識にしたその行動に内心驚くAの手を引く豪炎寺。
フィールドに着いた途端Aの足元にあるボールを奪おうとする。
『豪炎寺くんきみ、言葉が足りなさすぎるんじゃないかな……』
「……お前、何者なんだ……」
どのくらい時間が経ったのだろう、少し息の荒れる豪炎寺。ボールは未だにAの足元にあった。
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作者名：あい | 作成日時：2023年3月18日 0時
