【BL小説】蝶の羽千切り

第1話　アザレア　アメジスト ページ2

「＿＿＿＿＿っ」




　よくある夢を見る


　人間の夢だ




　そんな日の目覚めは最悪で



　頬には無数の涙が伝った跡が




起きるにはまだ少し早かったかな・・・
外がまだ明るいや





　夕焼け色が黒いカーテンから漏れ部屋を薄暗く照らす

　そんな部屋をペットの猫が起きぬようコートを持ち抜け出した



　まだ日の沈んでいない城の中は玄関ホールでさえ静まり返っており足音が異様なほど響く




　重い玄関扉を開くと


　ギィイと音を立てホールに反響した





　日傘を片手にガゼボを目指し樹海をゆっくり進む


　はっきりとした目的はないが少し楽しみだ


　樹海の空気は夜と比べ日に照らされて暖かかった




　暫くすると屋敷から抜け出したペットの吸血猫が目を覚ましていたようで

　後ろから追いかけ、追い付いては日を避けるように主の影に入って歩き出した

　実にふてぶてしい




　樹海からガゼボのある花畑に抜けると日は既に沈み月が花々を照らしていた





「夜のにおいだね」




　花と戯れる猫を微笑ましく眺めながら深呼吸をし夜の匂いを堪能する




　花のにおい土のにおい木のにおい


　＿＿＿太陽のない大地のにおい




落ち着くな





　池の上の角灯とガゼボの角灯に火を灯すと

　実に幻想的な風景が浮かび上がった





今日の月はやけに大きな満月だ



　空に浮かぶ大きな月を見上げ黄昏る







　何かが起きるわけもなく平和に過ごしていた日常に何かが起こる予感がした



　何も起きるはずもない運命が変わる予感がした

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