天穹ソルティ【ハイキュー】【及川徹】

luscious ページ47

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世の中には俺たちの感性では耐えられないような非道な行いが蔓延ってる。


殺人、暴行、窃盗、差別、虐め、と、それは数えだしたらキリがない。酷い話だ。俺たちはそれを知っていながら、可哀想だと思いながら、堕落的に幸せを享受しているのだから。


かくいう俺だって普通の男子高生だ。高校の、たった三年間の青春をバレーに注ぐ、普通の男子高校生。


そんな俺に、ある夏の日、少しだけの非日常が流れ星のように降ってきた。


可哀想な女の子だった。人はみな、ひとたび彼女を見れば憐れんでしまうような、そんな生をうけたこども。


それでも、彼女がからっぽだった海に少しずつめぐみの水を注いで、ちっぽけな穹を無限に広げていき、瞬く星に手を伸ばす様は、とても美しかった。


人は彼女を哀れだという。


でも、彼女はしあわせなこどもだった。天穹をいとしむ、やさしいこどもだった。


夢を見るのだ。願わずにはいられない。


彼女がうんと綺麗になって、もっともっと幸せになれる夢。カッコいい女性になる夢。彼女は、Aはきっと、凄い人になれるのだ。俺たちでは手も伸ばせない、遥か彼方の穹にいっとう煌めく星になれる。


だから、彼女がそんな素敵な人になる間の、ちっぽけな手助けができたとすれば、


それはとてもステキな話で、これほど誇らしいことはないと思った。





これはひとりの少女が、穹の青さを知り、海の豊かさを知るはなし





煌めく星に手を伸ばし、無限の彼方を夢みるはなし





とある男子高校生と、ちょっぴりしょっぱいしあわせを抱きしめるはなし

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