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「A、こうこういくの?」
「うーん。Aは受験勉強してないからなあ」
「及川より頭良いけどな」
「ちょっと岩ちゃんマジレスやめて」
思えば、そんな話はちらりとも頭に過ったことがなかった。Aはまだ一日中外で生活できるほどの体力はないし、心も十分に成長していない。
でも、1度聞けば魅力的な話だ。Aが、俺達と同じ学校に通う夢。
「体が弱いんなら仕方ないけどさ。でもやっぱ普通の高校生活楽しみたいじゃん。一生にたった三年間しかないんだし」
「それー。Aちゃん、体がもうちょっと強くなったら青城に来てよ」
いつの間にかマッキーをのしたのか、白坂も会話に入ってきた。後ろではトドメを刺されたマッキーが岩ちゃんとまっつんに慰められてる。岩ちゃんのそれは寧ろ傷を抉ってる気がするが。
「青城いいとこだよ〜!膨張色だけど制服可愛いし」
「膨張色(笑)」
「うんうん。校舎とか設備とか綺麗な方だし。何より及川も一緒じゃん」
Aの瞳がパチリと音を鳴らす。
「徹といっしょ?」
「まあ、学年は違うけど、学校は一緒だよね」
「及川がいなくても青城めっちゃいいとこだよ。絶対楽しいって」
「及川がいなくてもって何さ」
「あんたちょっと黙ってなさいよ」
矢口に睨まれて冷や汗が出る。
白坂が微笑んだ。
「一生に一度きりの青春なんだからさ、思いっきり楽しもうよ」
「たのし、む...」
「あ、そろそろ時間じゃね?」
「ホントだ。じゃあAちゃんまたねー。今度は高校で会お」
「俺達ガン無視なんですけど...」
矢口の声に白坂が頷いて、ヒラヒラと手を振りながら二人は去っていった。嵐みたいな立ち去り様だ。
Aが呆けたように口を開けていた。
「バトン部勢は相変わらず嵐みてえな連中だな」
「オレモウタチナオレナイ」
「花おつー」
Aはもう一度、たのしむ、と呟いて、俺の方を向いた。
ああ、その瞳が好きだ。
無限の穹が広がる、星屑が光る世界。
「A、高校にいきたい」
冷えてしまった甘酒が、ポチャンと音を立てた。
*raw...生、未加工。調理や加工をしていない様。
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ゆん(プロフ) - 素敵な作品で続編が気になってしまいました💦期間限定とのことですがすごく感動してます😭 (2022年9月28日 19時) (レス) id: d0dd043faf (このIDを非表示/違反報告)
桃缶(プロフ) - たくさんの温かいコメント、本当にありがとうございます。失礼ながら個人への返信は控えさせて頂きます。どうでもいい話ですけど、BGMはUruさんの『あなたがいることで』がオススメです(笑)ぜひ聞いてみてください。 (2020年5月9日 16時) (レス) id: 429c5bc4b5 (このIDを非表示/違反報告)
なむなむ(プロフ) - すごくいいお話でした。この作品を読んでアンチコメントとかする人はいないですよ!!いい作品ですもん。色んな人に読んでもらいたい作品です! (2020年5月9日 13時) (レス) id: 2521c199da (このIDを非表示/違反報告)
メビ(プロフ) - とても素敵な作品だと思いました!期間限定なのが惜しいくらいです。感動をありがとうございました! (2020年5月9日 12時) (レス) id: ee2ddb04ba (このIDを非表示/違反報告)
露亞(プロフ) - これ…期間限定公開なんですか?も、勿体ないです!!凄く素敵な作品でした……!! (2020年5月9日 10時) (レス) id: 5fe7b44b45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エリンギ(サブ垢) | 作成日時:2020年4月24日 10時