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十月下旬の宮城県春高代表決定戦決勝。
俺たちはまた、白鳥沢に勝てなかった。そして、高三の先輩方が引退した。
「...ただいま」
「おかえり。風呂湧いてるから先に入ってきなさい」
「...はーい」
いつもの珍道中でラーメンを食べてから家に帰ってくると、母ちゃんは俺に何も聞かず風呂に入れと言う。いつもの事だった。北一の時から変わらない、負けた日のルーティン。
悔しさなのか自虐なのか分からないごちゃごちゃな感情を、体と一緒に洗い流すしか、心を落ち着ける方法はなかった。
もっと練習しなければ勝てない。もっと考えなければ勝てない。止まっていられる時間も、後悔していられる時間も、俺たちには残されていないのだから。三年間なんてあっという間だ。
風呂から上がりリビングに行くと、母ちゃんは黙っておにぎりと味噌汁の乗ったお盆を差し出してきた。
「どうせ部屋で夜更かしするんだろうからこれ持っていきなさい。Aちゃんはもう寝たはずだから、静かにしてよね」
「ありがと」
「...お疲れさま」
それだけ言って、母ちゃんは洗い物を再開する。俺は何も言わずにエナメルバッグを肩にかけ、お盆を持って2階に上がった。
襖を開ける。
「...A、起きてたの?」
「徹、まってた。かえってこないから」
「...ありがとう」
Aの純粋な優しさに強ばっていた頬が緩む。心配してくれたのだろう。本人は無自覚であっても、嬉しいことに変わりはなかった。
彼女がここに来て、もうすぐ二ヶ月が経とうとしている。
Aは俺の持っているお盆を見て首を傾げた。
「ゆうごはん?」
「ううん。夜食」
「夜食」
「今からちょっと夜更かしして試合の反省をするんだ。お腹が空くからって母ちゃんがくれた」
「...試合の、はんせい」
Aは呟いた。
負けたのだから、負けたなりに要因を探さなければならない。
*acidic...酸っぱい。熟していない果実の強烈な酸っぱさ。
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ゆん(プロフ) - 素敵な作品で続編が気になってしまいました💦期間限定とのことですがすごく感動してます😭 (2022年9月28日 19時) (レス) id: d0dd043faf (このIDを非表示/違反報告)
桃缶(プロフ) - たくさんの温かいコメント、本当にありがとうございます。失礼ながら個人への返信は控えさせて頂きます。どうでもいい話ですけど、BGMはUruさんの『あなたがいることで』がオススメです(笑)ぜひ聞いてみてください。 (2020年5月9日 16時) (レス) id: 429c5bc4b5 (このIDを非表示/違反報告)
なむなむ(プロフ) - すごくいいお話でした。この作品を読んでアンチコメントとかする人はいないですよ!!いい作品ですもん。色んな人に読んでもらいたい作品です! (2020年5月9日 13時) (レス) id: 2521c199da (このIDを非表示/違反報告)
メビ(プロフ) - とても素敵な作品だと思いました!期間限定なのが惜しいくらいです。感動をありがとうございました! (2020年5月9日 12時) (レス) id: ee2ddb04ba (このIDを非表示/違反報告)
露亞(プロフ) - これ…期間限定公開なんですか?も、勿体ないです!!凄く素敵な作品でした……!! (2020年5月9日 10時) (レス) id: 5fe7b44b45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エリンギ(サブ垢) | 作成日時:2020年4月24日 10時