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sweet ページ16

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「あおら、徹ちゃん久しぶりさね」


「久しぶり佐々木のおばあちゃん。突然わがまま言ってごめんね」


「構わね構わね。こっだめんこいびでっこさ食べてもらえで嬉しいがな。徹ちゃんも随分男前さおがったんだべ」





佐々木のおばあちゃんの家に上がらせてもらった。車椅子からAを下ろし、居間まで抱えていく。


佐々木のおばあちゃんは、相変わらず色々な方便が混じっている。子供の頃は花巻の方に住んでいたからだそうだ。まあ殆どが仙台弁だから一応聞き取れる。


ぽかんと口を開くAに思わず笑みが漏れた。





「佐々木のおばあちゃんは、Aに可愛いね、って言ったんだよ」


「...方言?」


「うん」





会話をする俺達を、佐々木のおばあちゃんは昔と変わらない笑顔で眺めている。


佐々木のおばあちゃんは優しい人だ。突然すももが食べたいと”妹”を連れてきた近所の子供を、なんの詮索も入れずに受け入れてくれる。





「ささ、あがいん。おらん(すもも)さ美味しいんだべや」


「ありがとう!」





おばあちゃんが出してくれたのは、小さくカットされたすももだった。恐らく庭先の木から収穫したものを一週間ほど置いておいたのだろう。試しに食べてみたが、すもも特有の強い酸味も殆ど抜けて甘みが増しており、やわらかくて食べやすかった。


これならAも食べられる。


佐々木のおばあちゃんの配慮が嬉しい。





「A、食べてみな。これ、皮は剥かずに食べるんだよ」





皮の部分に爪を当てていたAはビクリと肩を揺らし、戸惑いながらそれごと口に入れた。


Aの瞳が、満月のように真ん丸になった。




「おいしい」


「んだべ〜。李はそのまんまが一番だっちゃ」


「...とても、おいしい」





今度は俺が驚く番だった。


Aが、とても、と言った。


Aは、にこにこ頷くおばあちゃんに向き直った。





「おいしい。おいしいすももをくれて、ありがとう、ございます」


「そうさね。そいづは良がったべ」





人間というのは、ふとした時には成長しているもの、らしい。








*sweet...甘い。糖や蜜の味わい。

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ゆん(プロフ) - 素敵な作品で続編が気になってしまいました💦期間限定とのことですがすごく感動してます😭 (2022年9月28日 19時) (レス) id: d0dd043faf (このIDを非表示/違反報告)
桃缶(プロフ) - たくさんの温かいコメント、本当にありがとうございます。失礼ながら個人への返信は控えさせて頂きます。どうでもいい話ですけど、BGMはUruさんの『あなたがいることで』がオススメです(笑)ぜひ聞いてみてください。 (2020年5月9日 16時) (レス) id: 429c5bc4b5 (このIDを非表示/違反報告)
なむなむ(プロフ) - すごくいいお話でした。この作品を読んでアンチコメントとかする人はいないですよ!!いい作品ですもん。色んな人に読んでもらいたい作品です! (2020年5月9日 13時) (レス) id: 2521c199da (このIDを非表示/違反報告)
メビ(プロフ) - とても素敵な作品だと思いました!期間限定なのが惜しいくらいです。感動をありがとうございました! (2020年5月9日 12時) (レス) id: ee2ddb04ba (このIDを非表示/違反報告)
露亞(プロフ) - これ…期間限定公開なんですか?も、勿体ないです!!凄く素敵な作品でした……!! (2020年5月9日 10時) (レス) id: 5fe7b44b45 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:エリンギ(サブ垢) | 作成日時:2020年4月24日 10時

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