天穹ソルティ【ハイキュー】【及川徹】

salty ページ2

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世の中には俺たちの感性では耐えられないような非道な行いが蔓延ってる。


殺人、暴行、窃盗、差別、虐め、と、それは数えだしたらキリがない。酷い話だ。俺たちはそれを知っていながら、可哀想だと思いながら、堕落的に幸せを享受しているのだから。


かくいう俺だって普通の男子高生だ。


苦しいと思う事は普通に嫌いだし、痛い事も悲しい事ももちろん嫌いだ。だからなのか、人間は無意識に悲惨な現実を見て見ぬ振りする。


俺だって、案外身近なソレを見て見ぬ振りしながら、人生でたった3年間の青春の、ちょうど峠を越えようとしていた。見ていて辛いものには蓋を、可哀想なものには哀れみを振り撒きながら。


人は、痛い事が嫌いで、苦しい事はしたくない。特殊な性癖や事情がなければ誰だって同じだ。


でも、それが苦しい事だと分かっていて、痛い事だとわかっていて、他人に降りかかるそれには反応するのに、自身に降り掛かっている事になんの疑問も抱かないというのは、何とも残酷な話だった。





「──────────これが、人間のしていい行い?」





とある夏の日の事だった。








*salty...しょっぱい、塩っぽい。

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