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「目標発見。射距離どうぞ」
「最上展望台からここまで高低差153.3ヤード。射距離931.8ヤード」
「コリオリが出しゃばるな」
「調整しろ。右からの風はプラス5度。風速12.8メートル」
言われた通りに計算して目盛りをずらし、スコープ越しに武装した男を捉える。
「インカムを現場にいるチームのものに接続するから、カウントはそちらに合わせろ」
「了解」
スッと耳元を弄られる。すると周囲の雑音と共に連絡を取り合う男の声が耳に流れ込み始めた。隣でカチリと音がする。恐らく少女のインカムを合わせたのだろう。
「アラン、こっちは準備完了だ」
『おいおい、マジでやるんですか』
「私が冗談で言うとでも?」
『あの射程距離で手の甲なんて小さい的打てるのはFBIじゃマックくらいですぜ。目が悪くならなきゃあ、後三年は持っただろうに』
「いない人間の話をする暇はない。早くカウントを始めろ」
『誰だか知らねえがスナイパーさんよ、インカム繋がってるか?』
「繋がってます」
『お前かあ?ボスのお眼鏡に叶ったのは』
「無駄話をするな。早くしろ」
『ハイハイ、了解。三十秒程待ってくれ』
カチリとまた音がした。
インカムを切った音だ。
切ったのは赤井ではないから、もちろん、一人しかいない。
「最後に聞きたい」
「何です?」
「お前、本当に撃てるな?」
勝手に連れ回しておいて、今更である。だが、赤井はいい加減彼女の独断専行ぶりに慣れてきていた。
FBIの狂犬と恐れられる捜査官とは、きっとこの少女の事だ。狙撃経験があるとはいえ新人に無茶苦茶な作戦を命令し、誰もがそれを直ぐに受け入れたところを見れば、一目瞭然だ。傷など知らなそうな白雪の掌は、沢山の血を被ってきたのかもしれない。赤い両眼は凄惨な現実を何度も目の当たりにしてきたのかもしれない。だから会う先々で相手に敬意を持って接される彼女に、赤井が少しだけというには過分な興味を持ってしまっているのは当然の事なのだ。
ターゲットのいる先を睨み付けているであろう少女に口角を上げた。
「Yes,my boss」
「・・・・・・」
少女は何も言わなかった。けれど、少しだけ身じろきした。
『カウントダウン開始。10、9、8、7、6、』
引き金にかけた指に力を込める。
『5、4、3、2、1、
──────Zero!』
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エリンギ(プロフ) - ありがとうございます!台詞は海外ドラマを参考にしています! (2022年9月27日 7時) (レス) id: d64584d3be (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 主人公達の台詞回しが素敵ですね。見かけは未成年なのに強者感マシマシでカッコいい主人公にも、ギャップの差で心を掴まれました。どうなっていくか、これからの展開が凄く楽しみです。 (2022年9月26日 2時) (レス) @page4 id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
エリンギ(プロフ) - ベルさん» ありがとうございます! (2022年9月25日 23時) (レス) id: d64584d3be (このIDを非表示/違反報告)
ベル - かっこいい夢主の話はあまり見たことなかったのでとても面白いです!更新頑張ってください!! (2022年9月25日 19時) (レス) @page6 id: 6b74fe665f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エリンギ(サブ垢) | 作成日時:2022年9月25日 12時