異能は月下獣 6 ページ36
腕に羅生門を纏い、それで私を殴る芥川さん。
あまりの威力に私の体が吹っ飛ぶ。
何て言うか、今日は吹っ飛んでばっかりだなあ。
そんな呑気な事を考えながら、私の体は壁に激突した。
「貴様の異能は所詮、身に付けて幾許も無い付け焼き刃。
欠缺ばかりで戦術の見通しも甘い。だのに、何故貴様なのだ」
私を見ているようで見ていない。
きっと今彼が見ているのは……。
「――云わせぬ。あの人にあのような言葉、二度と云わせぬ!!」
太宰さんだろう。
羅生門に両肩を捉えられ、そのまま上へと持ち上げられる。
抵抗したいが、血の流しすぎて体が言う事を聞いてくれない。
ジャキッと鋭く尖った羅生門。
それが隙間なく私の周りを囲んでいる。
……あぁ、串刺しって痛いんだろうなぁ。
「羅生門──彼岸桜!!」
針の様な羅生門に、体中を貫かれる。
絶句するようなその痛みに、悲鳴すらも出ない。
勿論悲鳴何て上げるつもりは無いのだが。
羅生門から解放されると、力なく私の体が地面に落ちる。
着地する気力はもう残っていない。
去ろうとする芥川さんの足が見えた。
……ダメだ。
まだ、まだ終わっちゃいけない。
私には、まだやらなきゃいけないことがあるんだから。
自分を奮い立たせる。
そうしなければ、どうにかなってしまいそうだ。
『……待っ……て……』
必死に声を絞り出す。
どうやらちゃんと届いていた様で、芥川さんが歩みを止めた。
ばっと驚いたような顔をして此方を振り返る。
『なんで……貴方は、そんなに……強いのに、なんで……鏡花ちゃんを、利用したの』
立ち上がろうとするけど、腕に上手く力が入らない。
いつの間にか、白い服が真っ赤になっている。
吸いきれなくなった分の血が、ボタボタと床に垂れた。
「……。『夜叉白雪』は殺戮の異能。他者を殺す時のみ鏡花は強者だ。人を殺さねば無価値」
本当に、そう考えているのか疑問に思う。
生きる意味を与えたかったのは知っている。
本当に今言ったのが彼の本音なら、彼は少しだけ間違えてしまっただけ。
もし嘘ならば、本当に根は優しいのだろう。
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ウミソラ(プロフ) - とても面白かったです!!続き楽しみに待ってます!!! (2018年10月22日 18時) (レス) id: f06a1e9de4 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 面白かったです^_^読んでいて、楽しかったです^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2017年11月13日 22時) (レス) id: 8c0a96a096 (このIDを非表示/違反報告)
大吉 - 面白いです!続き楽しみにしてます!! (2017年11月2日 14時) (レス) id: 565b1876f3 (このIDを非表示/違反報告)
ユリオLOVE - 中島ちゃんに鏡花ちゃんマジかわゆすこの小説大好きなので最新楽しみにしてます! (2017年8月26日 8時) (レス) id: b580a56628 (このIDを非表示/違反報告)
瑞祥(プロフ) - シュガーさん» コメントありがとう御座います!そう言っていただけると嬉しいです! (2017年7月30日 13時) (レス) id: 099595ab61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑞祥 | 作成日時:2017年7月1日 9時