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異能は月下獣   8章    1 ページ20

私は弱い。


弱いから、周りの人を傷つける。



生きている価値なんてない。


私が生きているから、周りの人が不幸になる。



……少しだけ、調子に乗っていたのかも。


文ストの世界に来て、中島くんの立場になって。


自分が主人公なんだって、ヒーローなんだって思い込んでた。



でもそれは間違い。


私は所詮私であって、中島くんにはなれないのだ。



……酷い神様。


どうせならあのまま殺せばよかったのに。


私なんかを彼の代わりにしたって、悪い方向に進むだけなのにね。


そう思うでしょ? ――朝比奈ちゃん。




「……A、貴女は自分を責めすぎだよ。どうしてそんなに過去を引きずるの?

私は貴女を恨んでないし、寧ろあの世界でやり直してる貴女を応援しているのに」




綺麗な髪をなびかせながら、朝比奈ちゃんがそう言う。




『いいよ、無理しなくて。……朝比奈ちゃんは私を恨んでる。

だってそうでしょ? 私を庇った所為で、朝比奈ちゃんはターゲットになって

……それで、耐え切れなくなって、飛び降りた。私が原因、だもん……』




グッと拳を握りしめる。


爪が食い込んで、血が出るほどに。



私は朝比奈ちゃんを殺した。


直接的ではなく、間接的に。



だから彼女は、きっと殺したいほど私を憎んでいる。




『今、私が楽しく暮らしてるのも、本当は憎いでしょ?

私は苦しんでいるのに、どうして貴女だけ幸せなの? って思ってるでしょ』


「そんなこと思ってないッ! どうしてわかってくれないの!!」




朝比奈ちゃんの、悲痛な声。


どうしてそんな声を出すのか、私には理解できない。


でも、何故か胸がチクリと痛んだ。



それに気づかないふりをしながら、私は目の前の彼女に視線を向ける。




「私はっ……私はただ、罪滅ぼしがしたかっただけなの……っ」




目に涙を溜めて、そう小さな声で言った。



イマイチ理解出来ない。


どうして彼女が罪滅ぼしをしたいの?


だって、それをすべきなのは、私の方なのに……。



そんな思いを込めて、朝比奈ちゃんの目を見詰める。


彼女も、潤んだ瞳で私をじっと見た。




「最初は、私も……貴女を虐めてた。地味でひ弱そうな貴女を、心の奥底で馬鹿にしてた。

つい……そのことを、友達に喋っちゃったの!!」




彼女の告白に、胸がズキンと痛む。

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ウミソラ(プロフ) - とても面白かったです!!続き楽しみに待ってます!!! (2018年10月22日 18時) (レス) id: f06a1e9de4 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 面白かったです^_^読んでいて、楽しかったです^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2017年11月13日 22時) (レス) id: 8c0a96a096 (このIDを非表示/違反報告)
大吉 - 面白いです!続き楽しみにしてます!! (2017年11月2日 14時) (レス) id: 565b1876f3 (このIDを非表示/違反報告)
ユリオLOVE - 中島ちゃんに鏡花ちゃんマジかわゆすこの小説大好きなので最新楽しみにしてます! (2017年8月26日 8時) (レス) id: b580a56628 (このIDを非表示/違反報告)
瑞祥(プロフ) - シュガーさん» コメントありがとう御座います!そう言っていただけると嬉しいです! (2017年7月30日 13時) (レス) id: 099595ab61 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑞祥 | 作成日時:2017年7月1日 9時

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