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異能は月下獣        10 ページ14

そう言えば、最近よく喋っている気がする。


多分、探偵社の人たちに慣れてきているんだと思う。




「35人殺しならまず死罪だな」




立ち止まった国木田さんがそう口にした。



35人。


数字だけなら、そんなに多くは感じられない。



でもその数字は、鏡花ちゃんが殺した人の数。


35人“も”、鏡花ちゃんは殺しているんだ。



高い襟で口元を隠す。


唇を強めに噛めば、ジリジリとした痛みが広がる。


でも血は出ていないから、そこまで気にすることはない。




「だがマフィアに戻しても、裏切り者として刑戮(ころ)される」




理不尽っていうか、なんていうか――。




『酷い』




私の口から、ポロリと言葉が零れた。


本当に無意識に。



でも、間違った事は言っていないつもりだ。



彼女が好きで殺してるわけじゃないのに、軍警はそんなことお構いなしに死刑にする。


マフィアもマフィアで、今まで散々利用してきた彼女を

たったあれだけの事で、裏切者としていとも簡単に処分してしまう。



何方を選んでも、彼女は幸せになれない。


マフィアで殺されなくても、罰は与えられるに違いないから。




「ならお前が助けるか? 極刑の手配犯でマフィアの裏切り者。

その不幸を凡て肩代わりする覚悟がお前にあるか?」




判ってるよ、判ってる。


国木田さんの優しさだってことは、ちゃんと理解している、つもり。



だけどさ、ちょっと言い方に気を付けてほしいなぁ……。


そういう言い方されると、自分の言いたい事が言いにくくなるんだよねぇ。


元から口下手で、伝えるのが苦手だっていうのに。




「A。不幸の淵に沈む者に、心を痛めるなとは云わん。

だがこの界隈はあの手の不幸で溢れている。お前の(ボート)は一人乗りだ」




一人乗り、かぁ。




「救えない者を救って乗せれば――共に沈むぞ」




そう言って歩き出した国木田さん。


探偵社に戻るのだろう。



……一人乗りの私の舟。


だけど、それでも私は彼女を救いたい。



共に沈んだりはしない。


だって彼女にも、立派な舟があるんだから。


私がちゃんと、隣で彼女に教えてあげればいいだけ。



……鏡花ちゃん、一緒に頑張ろっか。

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ウミソラ(プロフ) - とても面白かったです!!続き楽しみに待ってます!!! (2018年10月22日 18時) (レス) id: f06a1e9de4 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 面白かったです^_^読んでいて、楽しかったです^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2017年11月13日 22時) (レス) id: 8c0a96a096 (このIDを非表示/違反報告)
大吉 - 面白いです!続き楽しみにしてます!! (2017年11月2日 14時) (レス) id: 565b1876f3 (このIDを非表示/違反報告)
ユリオLOVE - 中島ちゃんに鏡花ちゃんマジかわゆすこの小説大好きなので最新楽しみにしてます! (2017年8月26日 8時) (レス) id: b580a56628 (このIDを非表示/違反報告)
瑞祥(プロフ) - シュガーさん» コメントありがとう御座います!そう言っていただけると嬉しいです! (2017年7月30日 13時) (レス) id: 099595ab61 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑞祥 | 作成日時:2017年7月1日 9時

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