安田過去編(安) ページ49
昔、兵庫で入院していた頃。
工場地帯の煙突から出る煙を見て"雲を作っている"のだと思っていた。
病室の窓から見える景色は代わり映えしなくて暇だと、子ども病院で知り合った友人が言っていた。
でも僕は、全然そんな事なくて。
例えば、窓から見える景色。
木々の葉が茂り、色づき、枯れ地面に落ちていく様だったり。夏にくる渡り鳥が雨の前は低空飛行をする事だったり。
沢山のことを発見して、沢山の"代わり映え"を楽しんできた。
院内でも友人は多く、治療の前日の子がいれば駆けつけて消灯時間まで一緒にいたし、僕が発作を起こした日はみんなが心配してお見舞いに来てくれた。
僕の毎日は美しさと驚きで溢れていた。
なのに、誰もが僕に向かってこう言うのだ。
「早く良くなるといいわね。」
「直ぐ退院できるようになるわよ」
「もう戻ってきちゃダメだよ」
「……おかえり。今日からまた一緒に頑張ろうね。」
僕が長らくお世話になった居場所は、他からみると褒められたものではなく、可哀想の対象であった。
生まれた時から一緒のこの弱い身体は、僕自身がそれを疎ましく思う以上に、周りに否定され続けたのだ。
僕の身体は人より少し弱くて、でも、それ以外はみんなと変わらないと思っていたからそれがちょっと悲しかった。
「章ちゃんはすぐ疲れちゃうから鬼ごっこ入れてあげれん！」
小学生の昼休み自由時間、クラスの子に言われた。
「安田くんは文化部に入った方がいいんやない？」
中学の入学式後、担任の先生に言われた。
「安田は病気だから近づかん方がエエって、」
「だから学校休みがちなん？」
「病気だから先生あんな安田に甘いん？」
「マラソン大会ズル休みやろ。エエ身分や」
中3の秋、クラスの子達が噂してた。
僕は自分の見ていた世界の狭さを知った。窓からの景色は、世界の全てではなかった。
煙突から出る煙は、真っ白なふわふわの雲を作っているわけじゃない。
あの煙は、僕のひ弱な体に有害な、白い毒だった。
僕は何も知らなかった。
僕は何も知らなかった。
僕は何も知らなかった。
知れる場所に、立てていなかった。
(あぁ……きもちわるいなぁ)
ほとんど新品のまま汚れることのなかった体操服を握りしめて、僕は教室のドアを開けることができなかった。中で噂するクラスメートの声が聞こえるたびに、ぐにゃりとねじ曲がって見える廊下の床。
視界が暗くなる。
何も知らないことは、罪だったのだろうか。
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てん(プロフ) - みづきさん» ありがとうございます！今後も楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2018年9月13日 15時) (
レス) id: 8ddec21add (このIDを非表示/違反報告)
みづき(プロフ) - 続き楽しみに待ってます！頑張ってください。応援してます！ (2018年9月12日 9時) (レス) id: 843d8c558c (このIDを非表示/違反報告)
てん(プロフ) - きいろさん♪さん» 応援ありがとうございます…！きいろさんのお陰で、更新を続ける事を決意することができました。拙い文ですが、今後も作品共々よろしくお願いいたします(´；ω；｀) (2018年4月29日 1時) (レス) id: 8ddec21add (このIDを非表示/違反報告)
きいろさん♪ - 更新頑張ってください！すばるくんがいなくなることが決まって、寂しいですが、7人の関ジャニ∞を書き続けてくれると嬉しいです！応援してます！ (2018年4月28日 8時) (レス) id: dfe925cf14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：てん | 作成日時：2018年3月31日 17時
