▼(渋) ページ17
渋谷side
結局、一曲も歌えないままステージを降りた。
どうしても、声が出なかったのだ。
誰に何を伝えたいのか、
何のために歌うのか、
わからなくなってしまった。
音楽だけは、自分の味方で居てくれると。
そう思っていた。
俺に残ったのは、音楽だけだった。
音楽にまでも見放されてしまったら…
(俺は、死んでしまう)
そんな気さえしていたのだ。
それから俺は、大勢の視線を浴びるのが怖い。
文化祭のステージを思い出すから。音楽になど興味ないと、好奇心のためだけに集まった視線を一身に浴びたあの日を。
視線を受けると脂汗が滲み、呼吸ができなくなる。
その症状は日に日に重くなっていき、ついに俺は通学さえ出来なくなった。
高校を中退した。
外に出ると見られている気がして落ち着かなくて、誰とも目が合わないように髪の毛を伸ばした。
何をするでもなく部屋でぼーっと過ごす。
謹慎を食らっていた日々のようだ。
当時聞いていたロッカーの新曲がラジオから流れる。彼らは最近CMソングでヒットしたらしく、インディーズの頃よりポップな曲を歌っていた。結局彼らも、人の視線によって変えられてしまったのだ。
人とは、そういうものだ。
しかし、完璧に引きこもり生活がスタートして約2年半。俺は、高校に通い直す事を決める。
きっかけは家族の心配の涙だった。
これまで何も口出ししてこなかった母親が、電話口で泣きながら知人に相談しているのを見たのだ。
自分だって、このままじゃダメなことは分かっている。俺はあまり人の居ないだろう通信制の学校を受験することに決めた。
逃げ道を作らないためにも、生徒調査用紙の備考欄には何も記載しなかった。
幸い、長い休養期間の間に大勢の視線でない限りは変に緊張することは無くなっていたし、人と会話出来るくらいには症状も落ち着いていた。
俺は無難に通学して、無難に高校卒業したいのだ。
"お前の音楽は、もう誰にも届かん"
呪縛のように、耳に響く声。
(知らん。)
俺は、もう人前で音楽はしない。
人前で歌って、それでもあの視線から逃れられなかったら…音楽にまで見放されてしまったら、俺の心は本当に死んでしまう。
だから、そっとしといてほしい。
「生きようとする、俺の邪魔せんとって」
軽音部の奴らから、逃げて走って帰った日。
1人の部屋で膝をかかえて呟いた。
ラジオでは、すっかりメジャーになったロッカーがバラードを歌っていた。
耳障りのいい、曲だった。
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てん(プロフ) - みづきさん» ありがとうございます！今後も楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2018年9月13日 15時) (
レス) id: 8ddec21add (このIDを非表示/違反報告)
みづき(プロフ) - 続き楽しみに待ってます！頑張ってください。応援してます！ (2018年9月12日 9時) (レス) id: 843d8c558c (このIDを非表示/違反報告)
てん(プロフ) - きいろさん♪さん» 応援ありがとうございます…！きいろさんのお陰で、更新を続ける事を決意することができました。拙い文ですが、今後も作品共々よろしくお願いいたします(´；ω；｀) (2018年4月29日 1時) (レス) id: 8ddec21add (このIDを非表示/違反報告)
きいろさん♪ - 更新頑張ってください！すばるくんがいなくなることが決まって、寂しいですが、7人の関ジャニ∞を書き続けてくれると嬉しいです！応援してます！ (2018年4月28日 8時) (レス) id: dfe925cf14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：てん | 作成日時：2018年3月31日 17時
