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第弐頁 ページ3

〜SIDE 中島敦〜
「敦、そっちはどうだ!まだあの小娘は見つからんのか!?」
「駄目です国木田さん、見つかりません!」
「くそ……もう3日はこの調子だぞ」
「目撃証言もさっぱり出ませんね、ほとんど情報がないです」

ここ5日ほど、僕たちはとある依頼で葉月という女の子を探している。依頼内容は、"会社の金を盗んで逃げたこそ泥を捕まえてくれ"。……実を言うと、資料の写真を見る限り僕にはどうにもこんな女の子がそんな犯罪をしたとは思えない。3日前に一度だけあの子を見つけたのだが、彼女は僕が探偵社の人間と気づくまで転びかけた僕を心配してくれさえした。とてもじゃないが盗みをするような子には見えなかった。それも商店街での万引きとかならまだしも、会社のお金なんて。

「中身と外見の噛み合わん奴なんぞ、俺たちの界隈(裏の世界)では珍しくもなんともないだろう。太宰の奴が善い例だ」

国木田さんは僕にそう云った。それでも、どうにも信じがたい。
ひとまず探偵社に帰ろうという話になり、僕らは重苦しい気持ちのまま探偵社の扉を開けた。

「お帰り敦君、国木田君。その様子じゃ釣果はなしかな?」
「太宰さん……はい、全然見つからないうえに情報も集まらなくて。……それに」
「それに?」
「……やっぱり、僕にはどうしてもあの子が盗みをしたようには思えないんです」

僕のその言葉に、国木田さんは眼鏡のフレームを押さえてはあ、と溜息をつく。

「またか敦。云っただろう、外見と中身の噛み合わない奴なんぞ大勢いると」
「はい、でも……」
「いやあ国木田君、意外と合っているかもしれないよ?なんせ敦君の異能は虎だ、野生の勘ってものがあるかもしれないじゃないか」
「いや、しかし……」

「国木田、敦の云ってることは正解だよ」

不意に長椅子(ソファ)の方から間延びした声がする。どこか気怠い、退屈そうな声。
乱歩さんだ。

「乱歩さん、それは一体」
「一体も何も、敦の云う通りなんだって言ってるの。その子……葉月は盗みを犯してはいないよ。でも、彼女は捕まえなきゃいけない。それがひいては彼女のためにも、探偵社のためにもなる。依頼とかは関係なくね」
「でも乱歩さん、彼女の居所は殆ど掴めなくて……」

僕がそう云うと、乱歩さんは心底呆れたという風に「はあ〜〜〜」と長い溜息を吐いた。今日一日で溜息吐かれ過ぎじゃないか?僕。

「倉庫街を探してみなよ」

そう云って乱歩さんはまたずるずると長椅子に沈んだ。

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作者名:Lemon x他1人 | 作成日時:2018年1月21日 16時

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