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第壱頁 ページ2

〜SIDE ポートマフィア〜
「樋口、終わったか」
「ええ先輩、つつがなく」
「……そうか、ならば戻るぞ」

ポートマフィアの禍狗、芥川龍之介とその部下、樋口一葉は任務を終え、帰路につこうとしていた。軽く埃を払い落とし、目の前で横たわる肉塊に背を向け歩き出す。
少し開けた裏通りに出ようかというところで、芥川はある少女にぶつかった。左側……表通りから駆けてきたのだろうか、息はあがり、話すのもやっとの状態らしい。自分がぶつかった相手が誰なのかはわかっていないようだった。

「あ……すみ、っ、げほ、すみません」
「……構わぬ。早く行け」

微かによろめいて、少女はまた駆け出す。ふとその時、彼女の隠し(ポケット)から何かがひらりと落ちた。樋口がそれを拾い上げ、裏返し眺める。それはどうやら手巾(ハンカチ)のようだった。白い布の片隅に、小さな向日葵の花が控えめに刺繍されている。樋口はそれを見て、はっとしたように身を固めた。

「どうした、樋口」
「……葉月」

ぽそりと呟かれたその名に、芥川が僅かに目を見開く。
信じられないというような声音で、確かめるように樋口に問い掛けた。

「……お前が、長らく探し求めてきた者か」
「ええ、間違いありません。この手巾にこの刺繍……葉月に違いない」
「そうか」

それだけ言うと芥川は樋口の手元を覗き込むために屈めていた身を起こし、少女が駆けていった方向へと黒い長外套(コート)を翻らせた。

「ならば追うぞ、樋口。広津達には連絡を入れておけ」
「はい、芥川先輩」

樋口もまた立ち上がり、芥川の後を追って歩き出す。
倉庫街の方向、つまり先程まで自分達が仕事をしていた方向へ。

――待っててね、葉月。

心の中でそう呟く。その声が届く筈も無い、あの少女へ。

「必ず迎えに行くから」

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作者名:Lemon x他1人 | 作成日時:2018年1月21日 16時

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