大切な【時透無一郎】

油断 ページ34

「…ッハ、…フッ」



　


浅く、短く呼吸をする音が明け方の帰路に響く。


　

　


伝令では最初、五体程の鬼と聞いていた。

全部切り終わって暫く経つと一体、二体と鬼が出て来、次第に囲まれるまでの鬼の数となった。


　
伝令と違う事は多々あるけど、こんな異常な数の鬼に対して僕一人はなかなか骨が折れた。



　
鬼は群れないのに何故？


　
そう思いながらも鬼の頸をひたすら斬っていく。



雑魚鬼もいれば多少手こずる程の奴も居た。



　

全ての鬼の頸を斬った頃には僕自身も疲弊しきってボロボロだった。

　
打撲や切り傷程度ならそこまで痛くはない。

やたらと力が強い鬼に鳩尾を一撃入れられていて、多分内臓が損傷していると思う。
　




　
ズキズキと痛む鳩尾を抑えながらも脚を進ませる。
Aが待っている屋敷に。




　


.








　

結局明け方頃に屋敷に着いた。

　
8日程で戻るとAに言ってたけど、今日は6日目。

もう僕が戻ってくると思っていないから、多分まだ寝てると思う。


そう思い、起こさない様できるだけ静かに戸を開けた。


　


カタンッ


　

戸を開けると、造りからして如何しても多少の音が鳴る。


　



「…ッフ…ッ」


　


なるだけ、声も出さない様に家の中に入る。


　

　



内臓の損傷だけで、他はなんとも無いから多分回復にそれ程時間も掛からないと思う。

　

…とりあえず、休息。


　

　
そう思い自室の襖を開けた。

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