毒舌スーパーアイドルは朝日奈になりました2 (ページ35)

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第84話『初恋』ページ35

ジュンside

あの人と出会ったのはきっと偶然なんかじゃなくって“運命”なんだと思う。

あの日は定期検診の日で珍しく私は一人で病院まで来ていたんだけど、その日は久しぶりに車椅子を使ったこともあってかなかなか思うように車体を動かせなくってちょっと気が滅入ってたんだ。

その時は本当にたまたま周りに人が全然居なくて誰にも手伝ってもらえる状況でもなかったから、もうコレの進む方向に進めばいいと思って勢いよく操縦したら角をそれちゃって、しかも、そこは階段だったんだ。

本当に、ツいてなかったんだ。

それで、もうこんな体なんだし1度死んで転生しようって思って目を瞑ったんだけどガシャンッて大きな音はしたのに私自身は痛くも何ともなくてそんな衝撃すら感じなかったんだ。

不思議に思って恐る恐る目を開けてみたらそこにはある男性が居て私の事だけを受け止めて助けてくれてたんだ。

その男性もちょっとだけ息が荒くてもしかして病状を悪化させちゃったかなって思ったんだけどそれは違ってた。

息が荒かったのは階段を降りてくる途中で凄い速度の車椅子がそこの階段へ突っ込んでいきそうになるところを見て尚且つ人が乗っているのが見えたからわざわざ急いで駆け降りて来てくれてたんだ。

貴「優しい人だね、で？それから？？」

ジ「これから話すからそんな急かさないでよ」

その人は私が無事だったのを見て安堵した表情を見せた。それからその人を追ってきたお医者さんや車椅子が落ちる大きな音を聞いてやって来た看護師さん達に囲まれてやれ「怪我はないか」だの「今日、帰る時に病院の車椅子を貸そうか」だの「それかもしくは泊まっていくか」とまで言われてちょっとパニックになりかけたのは今となってはいい思い出、かも？

『良かった、もしキミがここから落ちてしまっていたら悲しむ人はきっといると思うから助かって本当に良かったよ』

なんて微笑まれたらもう恋に落ちてた、と思う。

ジ『あのっ助けて下さってありがとうございます。私は重本ジュンって言います。貴方は？』

？『！！ …僕は朝日奈梓。また会う機会があればよろしくね』

貴「ええっ！梓さんだったの！？」

ジ「うん。だからAが羨ましい、なんて思ったりして」

貴「えぇ、でもジュンならきっと大丈夫だよ！」

ジ「それでね、これで終わりじゃないんだ」

それから私たちは会う度によく話すようになった。車椅子の練習のためにも病院に通院することが増えたから。

続く