毒舌スーパーアイドルは朝日奈になりました2 (ページ17)

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第66話『甘えている場合じゃない』ページ17

貴女side

あの小旅行から帰ってきてから昴さんや侑介さんとよく話すようになって弥くんとも今まで以上に仲良くなれた。

でもいいことばかりでもなかったりする。椿さんと梓さんの声優としての仕事が物凄く忙しくなってここ1ヶ月間は全く会えていない。特に椿さんとは添い寝してもらったのが最後になってしまっていてかなり寂しい。

そして仕事が忙しいのは椿さんと梓さんだけじゃなくて実は私もかなり忙しい。何故ならもうすぐスターライトクイーンカップの決勝トーナメントがあるからだ。その取材や宣伝、そこで着る衣装の打ち合わせなどやる事が多過ぎてマンションにもほとんど帰れていない。

けれど、今日は久しぶりにマンションに帰れることになったから実はかなり気分が上がっていたりする。

貴「ただいま〜。誰かいないの？…！！」

5階のリビングへ上がると鍵は空いていたのに電気がついていなかったから不審に思いながら中へと足を進めていくとテーブルの近くで梓さんが蹲っていた。

貴「梓さん！大丈夫ですか！？」

梓「あっ……あ、うぅ…」

梓さんは蹲って頭を両手で抑えていたため、あまり上手く話せないようだった。

貴「もしもし……救急車をお願いします。住所は――」

そんな様子を見てすぐに救急車を呼ぶ。この流れもジュンの時と同じようにやればいい。大丈夫。私なら出来る。

暫くして救急隊員の人たちが到着したため、そこで雅臣さんの病院に運んでもらえるように頼む。雅臣さんにも先に電話で伝えてあるため伝達もバッチリだ。

病院まで着いていくかどうか聞かれたけれどそこは断った。私にはまだやらなくてはならないことがあるからだ。

貴「もしもし？」

棗『どうしたんだ？突然、電話なんて…』

貴「梓さんが倒れてしまって病院に搬送されました」

棗『は……？今、なんて…』

貴「椿さんにも伝えなくてはいけませんがそれよりもまず先に事務所の方に伝えないといけないので棗さん、お願い出来ますか？」

棗『……』

貴「棗さん！」

棗『あ、あ……』

貴「…出来ないのなら私がやります。梓さんのところへ行ってあげて下さい、雅臣さんの勤めている病院に搬送してもらったので、では」

ここは鬼にならなければいけないところだ。グズグズしている時間はない。……芸能界はそんなに甘いところじゃないのだ。

そして私は電話を切って直接椿さんと梓さんの所属する事務所に向かった。

続く